恋一小説続き物

□黒崎先生の事情6
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「何やってるんだ阿散井?」
気付くと恋次は冷たい工房の床に寝転がっていた。
「てめぇ寝てただろう?俺が一生懸命仕事してる時に」
目の下に隈をいっぱい作った檜佐木さんがガスバーナーを手に持ち見下ろしていた。
「す、すみません」
俺の店のネットに出品したセミオーダーの品が想定外の好評で出品を途中で止めたにもかかわらず納期がぎりぎりになってしまっていた。
「出来た傍から梱包しろ!住所間違えるなよ!!!」
いや、そこら辺は任せて欲しいのだがと思ったが、寝不足でイライラしている檜佐木さんには逆らえない。
「すみません、俺の見込みが甘かったから迷惑かけて」
初めての企画で売れたのは嬉しいが店主として準備が足りなかったと痛感していた。
「ま、俺の才能がお前には解らなかったつーあれだな」
「はぁ〜そうっすねすみません」
ツッコむ気力もなく恋次は素直に答えた。
「なんだまた例の彼氏の事で悩んでるのか?」
手を動かしながら檜佐木さんが聞いてくるので恋次も作業しながら応える。
「彼氏じゃねぇっすよ」
恋人同士だったらどんなにいいか、と恋次は思う。
「え?でもやってるんだろう?」
檜佐木さんは驚いた様にこちらを振り返る。
「あーやってると言えばやってるって言うか、やってないちゃやってないと言うか…」

「なんだそりゃ!!!よく我慢してんなお前」
一護との現状を説明すると驚愕されてしまった。
「てかそこまで行ったらちょっと強引でも突っ込んじまうだろう?」
どんだけ我慢強いんだよと言われてしまった。
「だって嫌われたくねぇし」
「我慢強いてよりヘタレだな」
確かにその通りなのだが、恋次は今のこの関係を壊したくないとも思っていた。
一護は元々ノーマルなのだし、恋次とも本当は普通の友達で居たかったはずだ、今の関係は一護の優しさに付け込んだ彼が許せるぎりぎりの範囲なのではないかと思っている。
恋次はため息をつき商品を持ったままうなだれた。
「情けねぇな、俺がなんとかしてやろうか?」
「止めて下さいろくな事にならない」
恋次は涙目で懇願した。
二人は作業しつつそんな話しをしながら朝を迎えた。



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