恋一小説続き物

□黒崎先生の事情9
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「う…うん」
暫くすると恋次がうめき声を上げる。
「…起きたか?恋次」
「え?あれ?」
恋次は覚醒すると状況が飲み込めずキョロキョロと目を動かした。
気絶していて突然公園のベンチで目覚めたのだからしかたがない、もしかしたら一護が蹴ったせいで前後の記憶があやふやなのかも知れなかった。
「大丈夫か恋次?」
「い、一護!?」
恋次は一護の膝の上で零れんばかりに目を見開き一護を見上げてくる。
「うわぁっ!!?」
そして何かに気付いた様に恋次は奇声を上げて跳び起きた。
「れ、恋次急に起きねぇ方が…」
突然起きた恋次に一護が手を伸ばすと、恋次はそれを避けるように、ベンチの上を後ずさった。
「大丈夫だ、大丈夫だから…心配いらねぇから!」
恋次は両手を降って、大丈夫のジェスチャーをしたが、一護にはそれ以上近寄るなと言われている気がした。
「……」
恋次からの拒絶、さっき走っている時も拒絶された。
一護は自分の気持ちに答えが出せたなら恋次がそれを受け入れてくれる、そしてそれを待っていてくれるとどこかで信じていた。
根拠もなく恋次はずっと自分を好きで居てくれるのではないかと、それは一護の思い上がりだった。
今はただ蹴り飛ばされて怒っているだけかもしれないが、恋次の気持ちが檜佐木に傾いてしまう事だってあるのだ。

一護が黙ると恋次はそっぽを向いてブツブツと何か独り言を言っている。
夜の公園のベンチに二人は微妙な距離で座っていた。
気持ちが離れている分だけ隙間が空いているように感じた。
『何か言わねぇと…』
一護が呼び止めて無理引き止めたのだ。
それでなくとも恋次は一護の答えを待っているはずだ。
何も考えずに追い掛けてしまったが。
『恋次、怒ってるのか…?』


沈黙が息苦しい

「ごめん」
何故か恋次が謝ってきた。
「え!?」
『謝られた!?これはどういう意味なんだ!!』
一護の頭の中に「ごめん」の文字が飛び交う。

終いには「ごめんなさいお付き合い出来ません」と体育館の裏で頭を下げる女子学生まで想像してしまった。

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