恋一小説続き物

□黒崎先生の事情7
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翌朝、夜に降り出した雨がせっかく咲いた桜を散らす。
「次の方…今日はどうしましたか?」
一護はにこやかに小さな女の子に話しかけた。
「お胸が苦しいの…」「そうか?じゃちょっと見せてくれな」
いつも通り一護は診察をしている様に見えた、いやいつもよりよっぽど生き生きと仕事をしている様に見える。
「一兄何かあったの?」
「うん…」
遊子は心配そうに兄を見ている。
「あれで隠してるつもりなのかね」
夏梨は腕組みをしてため息をついた。

一護は午前中の診療時間を終えると食事を摂る気にならず自室でぼんやり雨の音を聞いていた。
寝転んだまま携帯を開くと何度も恋次から着信が入っている。
何度も出ようと思ったが、踏ん切りが着かなかった。
「俺が悩むところじゃねぇんだ」
自分は恋次の気持ちに応えなかった、長い間応えを曖昧にしていたのだ。
そこに恋次の気持ちに応えてくれる人が現れたんだ。
「なんだ。よかったんじゃねぇか、これで俺は恋次と普通の友達に…」
友達と呟いた瞬間一護の胸の中の大切なモノが抜け落ちる気がした。
「……」
コンコンと控えめなノックがする。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんにお客さんが来てるんだけど…」
ドアを開けると遊子が申し訳なさそうに立っていた。
「誰が来たんだ?」
恋次かもしれないと少しだけ思ったが
「知らない男の人だよ」
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