恋一小説続き物

□プラセボ〜石田君の場合〜
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弁解も説明もなしに、古びた木製の人形を差し出してくる。
また何か新しい遊びを始めたのかと、石田はタメ息を着いた。
「僕が解るわけないだろう、なんだいこれは?」
それはデッサン用の人形のように間接が付いていて、いつもザエルアポロの造る人形と違い全てのパーツが細身だった。
それに顔に当たる部分に何もない、表面は掘り出されたままの木がゴツゴツとしていて不気味な民芸品にも見えた。
「これは人形の中に入れるパーツだよ、それも凄く珍しいものなんだ」
ザエルアポロは指に絡み付いた石田の黒髪を丁寧に束ねると、人形の背中を開けてそれを入れる。
石田は人形よりもザエルアポロの手の中の抜け毛の方が気になった。
「まったく、禿げたらどうしてくれるんだ」
石田がまだ痛む頭皮を擦りながら文句を言うと
「大丈夫だよ、君が禿げても愛してあげるから」
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