小説置き場4

□昼下がりの教室で
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この恋はどこから来ているのか。シャーペンを頬に押し付けながらぼんやりと考える。斜め前では彼女が一心にシャーペンを走らせていた。明らかに文字を書いている動きではない。アニメーター志望の彼女はいつもの通り落書きでもしているんだろう。私は視線を黒板に向けた。どうせ今日も泣きついてくる。経験がそう語っていた。心は伴わず、形だけを写し取る。その間にも思考は勝手に浮いていく。

そう、恋はどこから来るのかだっけ。この気持ちが芽生えるのは私の心からだと考えるなら、この頭の中にある豆腐のような塊だ。彼女の振りまく仕草や表情や声だとするならば、彼女の体からだと言える。恋の発生源は彼女か、私か。問いの答えが二つに絞られる。もっとあるのかもしれないが私のお粗末な頭ではこれしか出てこない。もう少し国語をちゃんと学んでおくべきだった。

シャーペンを転がしかけて円柱だと意味がないことに気付いた時、ふと風が舞い込んだ。上げた目線の先で彼女の髪がふわりとたなびく。一瞬だけ、シャンプーが香る。私の心臓が甘く跳ねた。

そうだ、恋の故郷なんてどうでもいいじゃないか。


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