小説置き場4
□かに座流星群
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「つまり、明日の朝日は昇るか昇らないかわからないと?」
「そうだ」
「……地球が逆回転するのか?それとも太陽が爆散するとか」
「それはわからない。でも、その可能性はあるんだ」
笹川はしゃぶっていた飴の棒をぺっと吐き出す。暗闇に紛れたそれは小さな音を立てて足元のどこかに落ちた。察した佐々木が目を細める。
「だからって俺らが見張る必要はないじゃないか」
「ついてくる笹川も大分暇人じゃない?」
「うるせぇ帰るぞ」
「すみませんでした。手ぇ出して」
佐々木は手元のレジ袋から菓子の袋を破くとぼんやり浮かぶ笹川の手にそっと置いた。少し後にさくさくと微かに音を聞きながら佐々木は空を見上げた。ため息が出るほど綺麗な星空に白い線がいくつも現れては消えている。
「こんな星の欠片みたいに人工衛星が降り注いでちゃ、そんな気にもなるじゃん」
「見てる分には悪くないな」
「このままこの世界が破滅したら、僕らはその瞬間が見られるんだよ。それってさ、すごくわくわくしない?」
「………」
笹川は無言で手元の茶を飲み干した。そのままぐいっと上を向く。
「そんなこと、ねえのはわかってるけどまぁ、確かに面白いかもな」
「だよね。君を誘ってよかった」
2人の頭上には白く尾を引く流星が幾筋も流れていた。