小説置き場4

□面倒なのでごた混ぜ
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鏡と中身
お題:真実の暴走

鏡曰く、彼女はこの国で美しいと。真実を映し出すと言われるそれの言葉を鵜呑みしにた女王は嫉妬に狂い、齢7歳の少女を手にかけようとした。女王と呼ばれる年齢の淑女が、である。
世間一般の感覚としては、いくら顔貌が整っていると言えど、少女は少女なのだ。つまり元来の美貌を化粧で仕上げた女王の方が《美しい》という言葉がふさわしいはずなのである。
それなのになぜ、鏡は7歳の少女を選んだのか。
鏡に問いかけてみればそこは真実の鏡であるからして、ちゃんと答えてくれるだろう。

それを確かめるために今日私は掃除夫に化け、亡き女王の部屋に忍び込んだ。
かの鏡は召使いの心遣いによるものか、曇り一つなく輝いている。
私はそれを覗き込み、そっと話しかけた。

「鏡よ鏡よ鏡さん、あなたは少女を美しいと思いますか。」
「はい。私は少女が美しいと思います」
「自らの身を飾り立てた女王よりも。」
「はい。」
「もう一つ質問です。あなたは、幼女が好きなのですか」
「……………」

鏡はその表面を銀色に波立たせている。

「鏡さ「はい。私は幼い子が好きなんです」
「……」
「……もういいですか。私も忙しいので」

言うが早いか鏡は不思議な銀色の波をくゆらせ、私の顔と部屋の内装を映し出した。

予想通りだった。とはいえ、私に残されたのは人の秘密を暴いた空虚感だけだった。ああ、やめとけばよかった。
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