小説置き場2
□Clear Elegy
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目を開く。
薬の匂い。
いつもとは違うけど妙に見慣れてしまった、真っ白な部屋。
ぱちぱちとまばたきをしてからいつのまにかベッド脇のパイプ椅子に座っていた覚醒を見上げて、首を傾げた。
「……生きてる。」
「だろうな。」
「嘘でしょ。僕ちゃんと消えたよね。君と一緒に。」
「そうだな。」
「ならどうして、」
「もうやめろよ。わかってんだろ?」
覚醒は呆れたようにナイフでドアを指すと、それが開く瞬間にいなくなった。
白衣姿のランピーとスプレンディドを目にした瞬間、僕は全てを了解した。
ああそうか。
堂々巡りしてただけなんだ。
それはひどく自分勝手だった。
無意識に頬が緩むのがわかって、逆らわずにゆっくりと微笑んで、言った。
「ただいま、スプレンディドさん」
少し錆び付いてかすれてはいたけど、それは確かに僕の声だった。
しばらく使っていなかった喉の振動にけほけほと咳き込んだフリッピーが喜びで我を忘れたスプレンディドに全力で抱きしめられるまで、あと三秒。