本。
□season2 午後のひと時
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朝、目が覚めると…昨日出会った同じ瞳の彼がいた。
濃い金の髪が顔にかかってくすぐったい。
閉じられている目を見たところ、彼はまだ眠っているんだろう。
…温かい。
私は、抱きしめられている形で…身動きが取れない。
でも…とても気持ちがよくって、私は彼の胸に顔を埋める。
…昨日の事はあまり覚えていないけど、彼に触れられるのが気持ちいと言う事と、彼の名前がヴァイナスと言う事を覚えている。
…昨日以前の事は思い出せない。
真っ白で、思い出そうとしても引き戻させるように目を開けてしまう。
…私は誰なんだろう。
もし、昨日言っていたヴァイナスの話しが本当だとしたら…。
どうしてヴァイナスは私の事を変に思わないんだろうか。
空から降ってくるだなんて、常識的にはあり得ないと思うはずなのに。
そのままの気分で沈んでいると、目覚めたヴァイナスと目があった。
私と同じ、色素の薄い紫色。
ヴァイナスは私の額にキスを落とすと、力強く私を抱きしめた。
「…起きてたの?」
「いや、ついさっき目が覚めたんだ。」
言いながら次第に力を抜いて行く。
…離れちゃうの?
タオルケットを退けて、ベッドを出ようとしたヴァイナスを、私は引き止めた。
「…」
寂しかったとか。離れてほしくなかった…なんて恥ずかしくて言えないけど…。
「……やだ。」
とだけ、言えた。
それを聞いたヴァイナスは一瞬うろたえた後、すぐに抱きしめてくれた。
…まだ言葉に出来る事は少なくて、恥ずかしくて、…でもヴァイナスの前では素直でありたい。
それまで、ヴァイナスは待っていてくれるかな…。