本。
□season8 故郷からの文
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王都、コルディオ国から文が届いたのが…二日前。
気が付くと二日、時が過ぎるのはなんと早い事か。
…小さくため息をつくと、隣でがちがちに緊張しているルーナと目が合った。
自分と同じ、色素の薄い紫の瞳…。
………彼がルーナを視界に入れた時の反応が、なんとなく想像出来てしまう。
「(あれから八年もの時が流れたというのに、あの人はいきなりどうしたと言うのだろうか。)」
ヴィーの言うあの人とは、二日前に王都から届いた手紙の差出人…ヴァイナスの父、コンラッドだった。
「…ルーナ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?」
約束のお昼までには少し時間がある。
それに、王族と言えど…俺にはもう爵位が無きに等しい。
俺達の居る屋敷及びこの辺りの領地はノーストン公国の物で、オーランドの使えるレイナス国王から子爵の爵位は賜った。
…が、実際使っていないので…そろそろ返上しなければいけないと言う具合。
そんななので、今回父上が我が屋敷に来るのは非公式だ。
爵位も王族も関係無い立場での話し合いらしい。
……それもこれも、あのお喋りなオーランドの仕業に違いない。
今度あいつが家に入る時は、あいつの嫌いなトマト料理をふるまってやろうと、俺は心に決めた。
「…でも、ヴィーのお父さんなんでしょ…?」
「うん」
「なんだか会うの、緊張しちゃって…。」
……ああ、なんて愛おしいんだろう。
可愛い可愛い可愛い!と言う思いを心の中で押し留めて、俺はいたって普通に「大丈夫だよ」と笑顔でルーナの頭を優しく撫でた。
父上、本当に何しに来られるのか…。
俺はルーナを抱きしめて、また深くため息をついた。