メイン(小話)

□ストリート
1ページ/1ページ


「悪かった!悪かったってば!おいクリント!」

「お前は毎回そう言ってるが同じ事を何度も繰り返す、もういい。」



2110年 PROTECT本部


任務を終え、ストリートとクリントはたった今帰ってきたところだった。

何やら揉め事中らしいが、周りの人はそれを呆れ顔で見ている。

中には

「あいつ、またやったのかよ•••」

とかなんとか言ってる人も。


「仕方ないだろ?バッテリー切れちゃったんだから!」

「お前はちゃんと充電したのか?予備は持っていたか?」

「うぐ•••」

「ほらな、全く、呆れて何にも言う気にならない。」



ここで、わからない人の為に説明しよう。

この時代、銃は弾ではなく電気を使う。

銃の中で撃つ瞬間に瞬時に弾を作るのだ。

だからリロードも必要ない。

細かい事は置いといて、バッテリーをしっかりと充電していれば、レーザーポインターと弾を無制限に使う事が出来る。

一回の充電で任務一つ分をこなせるように設計されている為、エージェントは全員、銃の充電が義務化されているのだ。

また、万が一バッテリーが切れても予備を持っていれば何の支障もなく使える。



しかし、ストリートはその両方を忘れたのだ。




「だって、まさかクリントもバッテリー切れになるなんて思ってなかったから•••」

バツが悪そうに言うストリートに、クリントは溜め息をついて話す。

「あのな、俺は二連続で任務だったんだぞ?お前にその事話したよな?」

「う、うん•••」

「つまりだ、俺の銃がバッテリー切れになるのは自動的に決まってた。その為の予備だった。」

「••••••。」

「で、俺はお前にこう言った。銃の充電を忘れるなよってな。」

「••••••。」

「しかも、お前は俺のアーチェリーの矢まで取った。ラスト5本全部な。」

「••••••。」

「銃の予備バッテリーを取られた俺には唯一の武器だったんだがな。おかげで俺は丸腰、もう少しで死ぬところだった。」

「••••••。」

「おい、ストリート、何か言え。」

「•••。ごめんなさい。」


もう一度、さっきよりも大きな溜め息をつくクリント。


「で、俺から取った矢を射って敵に当たったのはたった1本。しかも、あのアーチェリーはどこから持ってきた?」

「•••落ちてた。」

「••••••。」


ここまで来ると、本当に救い様がないように思える。

クリントから予備バッテリーを奪い、アーチェリーの矢を拾ったアーチェリーで射つとは•••



しかも、これが初めてではないのだ。



それを考えると頭が痛くなってくる。

「ストリート、お前は1人で任務に行った方がいいな。」

「え!?なんで!?」

「少し緊張感が足りない。忘れ物が酷いぞ。1人なら忘れ物した時点で死ぬ事確定だからな。少しの間、1人で任務をやれ。」

「でもそうしたらクリントのバディは誰がやるんだよ!」

「俺は暫くブラントと組む。」


しまった、そいつを忘れてた。

ストリートは心の中で呟いた。


「そういう事で、俺から上に言っておくから。」



そう言うとクリントはさっさと歩いて行ってしまった。

「暫く1人で頑張れよ。」


背中越しに手を振られる。






「マジかよ•••」


1人落胆しながら呟いた言葉は、クリントには届かなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ