メイン(小話)
□ストリート
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「悪かった!悪かったってば!おいクリント!」
「お前は毎回そう言ってるが同じ事を何度も繰り返す、もういい。」
2110年 PROTECT本部
任務を終え、ストリートとクリントはたった今帰ってきたところだった。
何やら揉め事中らしいが、周りの人はそれを呆れ顔で見ている。
中には
「あいつ、またやったのかよ•••」
とかなんとか言ってる人も。
「仕方ないだろ?バッテリー切れちゃったんだから!」
「お前はちゃんと充電したのか?予備は持っていたか?」
「うぐ•••」
「ほらな、全く、呆れて何にも言う気にならない。」
ここで、わからない人の為に説明しよう。
この時代、銃は弾ではなく電気を使う。
銃の中で撃つ瞬間に瞬時に弾を作るのだ。
だからリロードも必要ない。
細かい事は置いといて、バッテリーをしっかりと充電していれば、レーザーポインターと弾を無制限に使う事が出来る。
一回の充電で任務一つ分をこなせるように設計されている為、エージェントは全員、銃の充電が義務化されているのだ。
また、万が一バッテリーが切れても予備を持っていれば何の支障もなく使える。
しかし、ストリートはその両方を忘れたのだ。
「だって、まさかクリントもバッテリー切れになるなんて思ってなかったから•••」
バツが悪そうに言うストリートに、クリントは溜め息をついて話す。
「あのな、俺は二連続で任務だったんだぞ?お前にその事話したよな?」
「う、うん•••」
「つまりだ、俺の銃がバッテリー切れになるのは自動的に決まってた。その為の予備だった。」
「••••••。」
「で、俺はお前にこう言った。銃の充電を忘れるなよってな。」
「••••••。」
「しかも、お前は俺のアーチェリーの矢まで取った。ラスト5本全部な。」
「••••••。」
「銃の予備バッテリーを取られた俺には唯一の武器だったんだがな。おかげで俺は丸腰、もう少しで死ぬところだった。」
「••••••。」
「おい、ストリート、何か言え。」
「•••。ごめんなさい。」
もう一度、さっきよりも大きな溜め息をつくクリント。
「で、俺から取った矢を射って敵に当たったのはたった1本。しかも、あのアーチェリーはどこから持ってきた?」
「•••落ちてた。」
「••••••。」
ここまで来ると、本当に救い様がないように思える。
クリントから予備バッテリーを奪い、アーチェリーの矢を拾ったアーチェリーで射つとは•••
しかも、これが初めてではないのだ。
それを考えると頭が痛くなってくる。
「ストリート、お前は1人で任務に行った方がいいな。」
「え!?なんで!?」
「少し緊張感が足りない。忘れ物が酷いぞ。1人なら忘れ物した時点で死ぬ事確定だからな。少しの間、1人で任務をやれ。」
「でもそうしたらクリントのバディは誰がやるんだよ!」
「俺は暫くブラントと組む。」
しまった、そいつを忘れてた。
ストリートは心の中で呟いた。
「そういう事で、俺から上に言っておくから。」
そう言うとクリントはさっさと歩いて行ってしまった。
「暫く1人で頑張れよ。」
背中越しに手を振られる。
「マジかよ•••」
1人落胆しながら呟いた言葉は、クリントには届かなかった。