メイン(小話)
□某国にて
1ページ/1ページ
6月20日 21時37分
「ターゲットの情報無し、撤収する。」
「•••わかった、ありがとう。」
はぁ•••と、溜め息を一つついて電話を切る。
「今日も収穫は無しか•••」
あれからもう少しで半年、だ。
イドニアでの任務で、隊長であるクリスが負傷、そして記憶喪失。
病院に運び込まれたものの、治療を受けている最中に失踪。
誰にも会わず、気付かれる事もなく、ましてや伝言なんてものもなかった。
連絡手段であるクリスの端末は病院に置きっ放しだったため、手当たり次第に探すしかなかった。
ちょっとでも情報が入れば現地へと飛んで行き、探しては戻る事の繰り返し。
上層部でも出来る限りの事はしたらしいが、全てダメだったという。
オリジナルイレブンである彼の失踪は、BSAAにとてつもなく大きな衝撃をもたらした。
「クリスは戻って来るわ、必ずね。」
クリスと同期であるジルさんもそう言って、何回か一緒に捜索に出た事もあった。
しかし1ヶ月、2ヶ月と、時間が過ぎて行く内に隊員の間でも愚痴が漏れる事があった。
「もう戻って来ないって•••」
「無駄だよ無駄。」
「本当は逃げてるんじゃないのかな•••」
そんな事を聞いては睨みつけてやったが、自分の中でもそう思い始めてる所は正直あった。
しかし、
「俺達は家族だ。家族を信じろ。」
何度もその言葉を思い出した。
例え新人だろうと、ベテランだろうと、分け隔てなく関係を築き上げていく彼の姿が目に焼き付いている。
また明日も探さなくては。
自分に大切な事を教えてくれた「家族」を。