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目を覚ますと必ず君は隣で眠ってる
朝の暖かな光が、カーテンの隙間から差し込み、小鳥の囀る声が聞こえる
なんて良い朝なんだろう
「んー…。夾架…おはよ…」
『おはよう多々良。今日もいい天気だね』
あたしが目を覚ますと、君もすぐに目を覚ます
「そうだねー…。お散歩日和かなあ」
『確かに。散歩とか日向ぼっこも悪くないね』
「決まり。今日は散歩に行こう」
他愛のないやりとりが好き
なんてことない会話なのに、あたしの心はこれだけで癒やされ落ち着く
昔のあたしじゃ、こんな生活考えもしなかった
全ては彼のおかげなんだ
かわりばんこで作る朝ご飯を食べて、支度して、いつもの場所に行く
「十束、夾架、おはよーさん。今日も元気やな」
「うん。夾架も俺も元気だよ。キングはまだ寝てる?」
「せや。尊はまだ寝てる。なんやあいつ、最近よう寝るからな」
鎮目町の一角にあるバー《HOMRA》
あたしたち吠舞羅の王権者属領であり、集会所のような溜まり場
バーのマスターの出雲さんの作る料理やカクテルとか、とっても美味しいんだよね
「誰が寝てんだよ」
「いだっ…ちょちょちょ!!キング!痛いって…!」
『あ、おはよう尊!』
バーの2階に住み着く尊、今日はいつもより起きるのが早いのでなにより
いつも通りの仏頂面で、ああ。とだけ答えると、いつも通りどかっとでかい態度でソファーにふんぞり返る
まあ王様だからでかい態度も似合うのよね
多々良の頭を尊の手ががっちりホールドし、力を加える
さすがのキングさんでも、頭蓋骨折っちゃうようなヘマはしないってわかってるけど、見てらんないなぁ
朝から元気な2人を尻目で見てると、後ろからパタパタと控えめな足音が聞こえてきて、あたしの後ろでピタッと止まる
それからツンッとあたしの服の裾が、軽く引っ張られる
「キョウカ…おはよう…」
『おはようアンナ。よく寝れた?』
アンナ。あたしと同じくストレインの少女
互いに異能を持つもの同士。女同士。色々あったけど、上手くやってるとは思うかな
私の問いにコクコクと頷くアンナは、なんて可愛らしいんだろう
「アンナも尊も腹減ってるやろ。今何か作るからまっとってな」
「キョウカ…髪…やってほしい…ダメ…?」
『全然いいよ。じゃあもっかい洗面所行こっか』
向かう先は洗面所。奥には浴室。
尊が使ってるわりには綺麗に整頓されてると思う…あ、失礼すぎたかな?
『アンナの髪は凄く綺麗だね。サラサラで羨ましいしいなー…』
絹のように柔らかで、素晴らしく櫛通りのいい髪を、ブラシで整えていく
あたしもこんな風にサラサラストレートになりたい
矯正かけようかなー。それかいっそバッサリショートにでも…
「キョウカも…きれい…」
「俺もそう思いまーす。ショートにしちゃうの勿体ないし、矯正かけたら痛むし、継続してかけないとだからめんどくさいよ?」
『ありがとアンナ。…ってなんで多々良がここに!下にいなかったっけ?』
アンナにヘッドセットの帽子をつけてあげると、何かちょっと幻聴が聞こえてきたと思ったけど、鏡に多々良が映ってる
さっきまで尊とじゃれあってたのに、どうしたんだか
「夾架は今のままでも充分可愛いから大丈夫!!」
『…話聞いてました?』
「んー、聞いてなーい」
『ばかっ…何す…!///』
しまった。アンナの目隠す時間すらないまま、してやられた
いきなり顔を多々良の方に向けさせられたかと思いきや、既に多々良の顔が目の前にあって、唇と唇がくっついてた
『ちょっと、アンナの前でこういう事禁止!!』
「って…唇拭うとか、酷くないかな?」
そういってる間にも、また唇を重ねてくる
そんな拭っちゃダメだったかな
冗談のつもりだったんだけど
でも、アンナの前はホントだめなんだってば!!
ほら、現に鏡ごしに凝視して、見てるじゃない
『わかったから!はいはいごめんなさい!!//』
「…ラブラブ…いいな…」
『アンナ、今見た事は忘れようね。アンナは何も見てない、うん、見てない見てない!』
ホント多々良のバカ…
「俺バカじゃないよ?まあ夾架よりはバカだけど、一応勉強できるよ?」
ああもう心読むなバカー!!
「しょうがないよ、俺たち繋がってるんだし??」
『でもあたしはそんなに多々良の心読めないし』
「なんでだろうねえ?」
あたしと多々良は心というか意識というとか、リンクをし、干渉し、繋がりあっている
あたしがストレインである以上、多々良と繋がってないといけない
そうじゃないと、あたしは…
「へーきへーき。何とかなるって」
『そうだね、ある程度距離が離れてても繋がってられるらしいしね』
「平気。キョウカの能力、安定してる」
多分アンナには見えてる、あたしの能力のことも
感応能力を持つアンナが言うなら、きっと大丈夫だと思う
「夾架さんたち降りてくるの遅いっすよー」
『美咲、猿比古、来てたんだ』
3人で下に降りれば、美咲と猿比古も来ていた
ぞくぞくと此処にみんな集まってきて、賑やかさも増して、朝晩の静けさが嘘みたいに思える
「確かにえらい遅かったな。上がってった十束も戻ってきいひんし、何しとったん?」
「…ラブラブ」
『きゃああ!//言わなくていいってば!!///』
出来上がったばかりのオムライス
尊はすでに黙々と食べ始めていて、アンナもパクパクと食べ始める
「否定しないところがまたアレですね」
『猿比古まで、そういうのいいから!//』
「朝からナニやってんすか十束さーん」
「ナニもしてないよ、八田〜」
「…いっぱいちゅうしてた…」
「あだっ…ちょ、ぶたないでよキング〜…」
もはや苦笑いしか出来ないです
男の子はみんな朝から元気いっぱいすぎて困っちゃう
こんな男ばっかの、不良の溜まり場かと思いきや、みんな優しくて、良い人ばっかりなんだよね
毎日毎日、みんなでくだらない事やって、バカ騒ぎして、大笑いして
あたしは、この場所にみんながいて、あたしもこの場所にいて、それだけでいい、他には何もいらない
生きる楽しさを教えてくれた、大事な大事な場所
あたしの人生は
あの時180°変わったんだ