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「さて、はよ手当せえへんとな。十束、外の看板しまって、CLOSEDにしてきてくれるか?」

「うん。わかった」

店を閉めるのにはまだ少し早い時間だが、客が来ないうちにさっさと閉めて、手当てをしてあげようと思い、草薙は十束にお願いをして、本日の営業を終了とした

普段なら嬉しい客でも今こられても困る
夾架も余り人目にはつきたくないだろうと、配慮しての行動だった

十束が外に出て行き、シンとなった空間で草薙が救急箱を漁る音だけが響く

「うーわ、痛そうやなぁ…。なんや、素手で剣でも掴んだんか?」

『……防ぐものなかったから、つい…』

「女の子なんやから、そないな無茶したらだめやないか」

『…私は危険人物だったので、女の子みたいに扱われた事なかったので新鮮な気分です。心配してくださって、ありがとうございます……』

サーベルを掴んだ時に深く傷ついた手のひらの消毒
見てるだけでこっちまで痛くなりそうだと草薙は思う
初めはそわそわしていたが、少しずつ場の雰囲気に慣れ始めた夾架に少しずつ訪ねていく

初めから、感情の起伏が殆どなく淡々と話すおとなしい子で、これが本当の彼女。とは何故か草薙は思えなかった

「なあ、手当て終わったら聞かせてもらえるか?何があって、施設から逃げてきたんか。もちろん、無理にとは言わへんけど」

『わかりました。ちゃんと、話します…』

ここに身を隠させてもらう以上は、キチンと話しておかなければいけないと思ったので、躊躇うことなく夾架は頷いた

手当てをされている間、痛いと一切言わなかった
傷に消毒をしても、うんともすんとも呻くことすらなかったので、草薙は不信感を募らせた

夾架の腕や脚に治りきってない切り傷やら打ち身が所々にあるのも気になった
そして手のひらに包帯を巻いている時、左手首に可笑しな傷があることに草薙は気付く

「夾架ちゃん、これ、もしかして…?」

『………止められないんです。わかってる、こんなの間違ってるって…止めなきゃいけないって…。でも、このまま死んでしまえたらって……』

「…ちゃんと消毒して、手当てせんと、痕残ってまうよ」

夾架の左手首の血管の上などに残された無数の切り傷
一本一本並行に切りつけられてるため、人為的にできたものと判断できる
蚯蚓脹れの様に残った傷痕から、赤みの引いていない真新しい傷まで
"リストカット"という単語がすぐに浮かぶ

起伏しない感情がこの時初めて揺れた
でも草薙はそれ以上何も言わずに、優しく丁寧に包帯で傷口を隠した
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