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「草薙さん、キング帰ってきたよー」
「なんやえらい遅かったな」
「ああ…」
漸く十束が戻ってきたと思ったら、周防も一緒にバーへと戻ってきた
看板を閉まっていたところに、丁度周防が帰ってきたということだ
「おめえ、傷だらけだな」
『…はい』
「キング、この子は九乃夾架ちゃん。ストレインで、色々ワケあって逃げてきて、追われてるんだって」
「…そうか」
少し疲れた様子でカウンターのスツールに座り、夾架を見、思った事をズバッと口にだす
でも何でいるんだとかを口に出さないのは、周防なりの考えで禁句だと察したからだ
夾架は十束にキングと呼ばれる怪訝な表情を浮かべる男を見て、怖がったりはせず、ただ変なあだ名だと思った
「周防尊。怖そうだけど、結構いい人なんだよ」
「十束、余計なこというな」
「あはっ、キング照れてるー」
「照れてねえ…」
周防が戻ってきた事で賑やかさを取り戻したバー内で、エタノールの匂いが充満していて、あまり好める匂いではないため周防はいつも以上に顔をしかめた
「夾架ちゃん、悪いんやけどシャツ脱いでもらえるか?」
雨で濡れてピッタリとシャツが張り付いており、透けてしまっているために、脱いだら下着のみになってしまうのは分かっていた
決してやましい気持ちなどはない
しかし脱いでもらわないと手当てが出来ないので、草薙は申し訳なさそうに尋ねた
夾架は言われるがまま、1つ1つボタンを外していきシャツを脱ぐと、下着と素肌が露わになる
うっすら骨が浮き出るほど痩せ細っているが、意外とあるその2つの膨らみ、草薙は思わず唾を飲んだ
(あかんあかんあかん!!相手は年下や!…でもこれは、あかん!///)
「草薙さん大たーん、流石にその格好じゃ恥ずかしいし寒いよね。なんか隠せるもの…あ、あと替えのシャツもいるよね」
「手当てのためや!人聞き悪いこと言わんといて!十束、二階から俺の替えのシャツ持ってき」
夾架は特に恥ずかしがって隠す、などという行動を起こそうともしなかった
ただただ無表情のまま、草薙にされるがままだった
『…別に慣れてるんで、恥ずかしくないです』
そんなの慣れてしまっていい感覚なのだろうか
ハァ…と深いため息を吐き出し、周防は自分が着ていたコートを脱ぎ夾架へと放り投げる
「見てらんねえ、隠せ」
「なんや尊も照れとるんか」
「…うっせ」
『ありがとうございます…。えっと、尊さん……』
苗字と名前を聞いたばっかりだったが、十束の呼ぶキングという名のイメージが大きすぎて、苗字が何だったか忘れてしまったというのが正直な所であった
草薙には尊、と呼ばれていたので、あぁそうだ、尊だ。と思い出してその名をそのまま口にした
周防に貸してもらったコートで前を隠しながら腕の手当てを受けていく
背中にもたくさん傷があって、見てて痛々しくて草薙は見てられなかった
周防も傷に気づき、更なる溜め息を吐く事しかできなかった
やがて十束がシャツを持って下りてき、ブカブカのシャツをとりあえず夾架に着てもらう事にした
「あ、あとさ、足捻っちゃったらしいんだけど…」
「それもっとはよ言いー…。とりあえず氷水で冷やそか」
靴を脱いでみれば踝の辺りが腫れ上がり、熱をもっていた
捻った挙句にそのまま何の処置をする事もなく、放っておき、更に負担をかけてしまったからだ
洗面器に氷水をはり、そこに足をつけ、冷やすという処置をとることにした