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「なあ、もっと能力について教えてくれへんか?」

夾架は己の未熟さ故に起こしてしまった事に、後ろめたさを感じていた
いつもなら、力を暴走させてしまうと必ず躾と称した罰を与えられるのに、怒る事すらしなかった草薙をより一層いい人だと認識した

『さっき使ったのが精神干渉能力で、人を感覚的に、内側から干渉する力です。能力を使う事で対象の人物と精神をリンクさせてその人の考えてる事や情報を読み取れます。
使いたくなくても、私の精神がフラついてるから勝手に他人とリンクしちゃって、何もかも知る事が出来てしまうんです。
この能力があれば、人間の裏の裏まで分かるし、考えてる事全部わかるから、悪いようにも良いようにも使えるので、これを、世の中で利用したいらしいです…』

「もう1つは?」

『もう1つは空気操作能力です。
空気というか風というか…とりあえず、衝撃波を出せたり、鎌鼬みたいな風を使えたり、頑張れば空気中の酸素濃度とかも変えられます。
…まだ自分でもよく分かってないんですけどね』

幼い頃から施設にいて何度も何度も検査をしても、能力の全てが分かることはなかった
もっと強力な能力が秘められているかもしれないし、底無しの力かもしれない

人間味のある生活を余り知らない
親の愛情も殆ど受けられずに孤独を感じて育ち、知っているのは汚い私利私欲に溢れた大人達

両親との面会は可能であったが、それは夾架は拒んだ
両親とは会いたくなかった。会ったらもっと会いたくなってしまうから。
もう何年も会っていないので、自分のことなんて忘れてしまったのではないか、いっそ忘れてくれた方が楽なのかもしれないと考えていた

「話してくれてありがとな。顔色めっちゃ悪いで。だから今日は寝たほうがええんとちゃう?明日これからのことについて、ちゃんと話そか」

『お言葉に…甘えさせてください…』

草薙の提案に、夾架は素直に乗ることにした

「尊、今日はベッド貸したって」

「あ?…ああ」

『い、いえ…ソファーでいいです…』

王の寝床を分捕って、気持ちよく眠りにつけるほど、強情な感情を持ち合わせてはいなかった
草薙の恐ろしい提案を柔らかく断り、現在自分が座っているソファーでいいと言う

「じゃあ俺も泊まってこーかなあ。草薙さんは家帰るよね?」

「帰る。泊まるのは勝手やけど、どこで寝るんや?」

「ん、ここ」

「ここは夾架ちゃんの寝床や」

「だから、俺も一緒に♪今晩は一層冷え込むらしいからさ、布団一枚じゃ寒いかなって。あと何かあったら心配だし」

ね?と十束は夾架の顔色を伺うように見た
しばらく黙ったのちに、二回ほど首を縦に振った
別になんでもいいや、と思ったのだ


十束はシャワーを浴びに二階へ
やがて周防は欠伸をしながら十束と同じく二階にあがっていく

夾架こそシャワーを浴びたい気分だったものの、できたばかりの傷に染みてさぞ痛いだろうと思い断念せざるを得なかった
なので明日の朝、軽めに浴びることにした


「ほなおやすみ。ゆっくり休みー」

「おやすみなさーい」

草薙が店を後にし、此処よりほど近い自宅へと帰って行った
それから店内の明かりを消し、2人でソファーに寝転がり布団を被った
少し大きめなつくりのため、2人で寝ても大丈夫そうだった

『あの…十束さん…』

「なあに?」

『やっぱり、なんでもないです…おやすみなさい…』

「??おやすみ夾架ちゃん」

何かを言いたかったらしい
でも結局口を閉ざしてしまい、そのまま背を向けたまま眠ってしまった
夾架の言いたいことを引き出してあげる事が出来ず、悔しい気持ちが募る
十束は夾架の頭を優しく撫でてやり、よく寝れるようにと心の中で祈った
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