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『ふー。少し買いすぎたかなあ…』

夾架の肩には色々なお店の紙袋やらがかかっていた
買いすぎたかなーとは思っているが、夾架は満足。といった表情だった

『あ、これって…』

バーへの帰り道
とてつもなく見覚えのある路地裏を通りがかる
ここは夾架が追われている時にセプター4の1人と戦った場所
数週間前の出来事だが、今でもその時のことは鮮明に覚えている
近寄ってみると、なにやら言い争いをする声が聞こえた
というよりも喧嘩、戦っている

チラリと覗いてみたら意外だった
中学生らしき男の子2人に、夾架より歳上であろう男が5人
5人組の男の方には見覚えがあった

先日、周防とコテンパンにしたばかりの奴ら
コテンパンにしたはずなのに、ピンピンしていて、大人気なく中学生に手をだしている
みっともないったらありゃしない

『ちょっと、何やってるの?』

「お、おまえは吠舞羅の…」

「こないだのアマか」

見過ごすわけにはいかなかった
なんでもない弱っちい男が5人いたところで、自分が不利だとか、そういうマイナスなことは一切思わなかった
寧ろ10人いようが20人いようが、変わらない

堂々と路地裏に入り、声をかければ男の顔は引きつる
そして周防がいないことを確認すると、態度を一変させ、威勢良くつっかかってきた

女だけなら自分たちでも倒せる。そう過信してしまったらしい男
少年は夾架を見て呆然としていた

『手、離しなさい。中学生に手出して楽しい?』

「んだとこのクソアマ!もういっぺん言ってみろ!」

『聞こえなかった?離せって言ったの』

片方の少年の胸ぐらをつかんだままの手を離せ。夾架はそう言ったのだ
しかし伝わらなかったらしい
返ってくるのは汚い言葉だけ
口で言っても分からない様なので、実力行使

夾架は指パッチンを1回すると、男は気絶して倒れた
ここでセプター4と戦ったときにも使った、相手の精神をのっとり、強制シャットダウンさせ、気を失わせる

「え…?」

『大丈夫。死んでないから』

いきなり倒れた男を見て、更に中学生は困惑していた
宥める様に言い、夾架はニコリと微笑むが、やってることはえげつないので、逆に怖く思えた

後はもうめんどくさくなって、夾架は赤の力も使い、残りの4人を倒した
先日も思ったが、弱すぎるのだ
施設で戦い抜いてきた夾架には、ウォーミングアップにすらならない

『怪我してない?どっか痛いとことかない?』

「は、はあ…大丈夫です」

「俺も特には…」

埃をたててしまったので、服をパンパンと叩きながら言う
中学生は何が起こって男たちが倒されたのか、分からない

指を鳴らしただけで男が気絶したり、火元もなにもないのに、美しい赤い炎が周りに広がり、男たちが熱がったり、これまた気絶したり。初めて見た奇妙な光景だった

臙脂色のブレザーを着ている少年2人は、どこかの学校の生徒なのだろう
高校生にしては、まだ少し幼げであることから中学生なのだろうと理解する

先ほど胸ぐらを掴まれていた方の少年は、ダークグレーの髪、黒縁の眼鏡。一見根暗そうだが、こんなところをうろついているということは、意外と悪なのか

それに比べてもう片方の少年は、オレンジに程近い明るい髪色で、前髪も襟足も長いし、目つきも悪かったので、治安の悪いこういった路地にいてもおかしくはないと思えた

つまらなそうな顔をしながら夾架をジッと見つめる少年たち

「助けてくれなんて、言った覚えねえんだけど」

『まあ、そう硬いこと言わずに。ここら辺、治安悪いからこういう奴らばっかだよ。こいつら結構危ない感じだからさ、中学生がこんなとこうろついているのは、関心できないな』

「別に関係ないだろ。あんただって女だろ。こんなとこうろつくなんて、可笑しいんじゃねーの?」

『あたしはいいの、普通じゃないから』

彼らは吠舞羅のこととか、ストレインの能力のこととか、そういう裏社会のことは知らないのか
まだ純粋だからこそ、此処は危険だと思う

しかし夾架は、少年たちの輝きのない目を見て、口角を釣り上がらせた
彼らが吠舞羅に入れば、目も変わるのかな。なんて冗談だが思う

「あんた…何者…?」

『あたしは、第三王権者、周防みこ……って、中学生にこの名乗りあげてもな…』

「…はあ」

少年の視線が痛かった
名乗るほどの者でもないのだが、なんとなく、ストリートで過ごす彼らに教えておいても、損はないと夾架は判断した上で、トップスの右裾を腹部まで持ち上げて、素肌に浮かぶ徴を少年たちに見せる

「ちょちょちょ、おっ、おい!!//何してんだよ!?//」

『あたしは吠舞羅の九乃夾架。覚えておいて』

吠舞羅のメンバーの証である徴を見せ、簡単な自己紹介をするけれど、果たして聞いていたのだろうか

目つきの悪い少年は顔を真っ赤にして、自分の手で顔を覆い隠した
服をめくっただけなのに、何故顔を赤くしているのだろう
捲りすぎて下着がチラついていることを夾架は知らない

唯々頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、どうしたの?と聞けば、少年は更に顔を赤らめる

「痴女…」

『痴女じゃないよ、別に。あたしは一途だもん』

眼鏡の少年がボソリと呟いたことに夾架はいち早く反応した
少年は眼鏡のブリッジを押し上げ、腕を組む

とりあえず少年たちが怪我もなく元気そうだったので、夾架は安堵する

それから、あまり遅くなると心配されてしまうので帰ることにした
慌てていたので地面に放り投げた紙袋などを拾いあげ、踵を返した

『それじゃあまたね。名前、絶対覚えておいてね』

「あ…」

彼らは行き場のない力をぶっ放す先が欲しいんだ
なんとなく、いつか2人が吠舞羅の名を掲げ、戦う日がくる。そんな気がした

この間会った宗像といい、最近未来を予知するかのように、ビビっと電撃に似たようなものが身体中を駆ける
夾架は先が楽しみで仕方がなかった

帰ったら草薙に、このことを話そう。そう決めたのだ
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