long
□08
2ページ/4ページ
『はー、生き返るー…』
夾架はソーダ味の棒付きアイスを食べていた
暑い中持ち帰られてきたので、少し溶けていた
だが、すぐにでも食べないと気が収まらないので、夾架はそのまま食べていた
「夾架、垂れそうだよ」
『あっ、やば…』
十束に垂れそうだと指摘され、あわててその場所を舐める
(うっわ、なんやめっちゃエロいわ…)
「ちょっと草薙さん、変なこと考えないでよね」
草薙の考えは十束に見破られていた
ただアイスを食べているだけなのに、どことなくやらしく見えてしまい、草薙は苦笑いした
『ねえ鎌本、何読んでるの?』
鎌本を含め、数人の男たちがソファーに座り、テーブルに何かの雑誌を広げていた
気になった夾架は、アイスの棒を捨ててから、鎌本らのところへ行く
「バイクの雑誌っすよ。姐さんも一緒に見ます?」
『へぇー、面白そう。すごっ、めっちゃかっこいい!!』
夾架にも見やすいように雑誌しをおけば、夾架は身を屈め、中腰で雑誌を覗き込むようにしていた
開かれた頁には、一台のバイクの写真とそれについて語る文で、結構ゴツくて雄々しいものだった
鎌本はこういうものにあまり興味を持たぬであろう夾架を、半ば冗談で一緒に見るかと誘ったら、随分と乗り気で、又、興味津々で見始めたので少し意外だと思う
「これめっちゃ格好良いんすよ。って…姐さん、見えてます!!」
バイクの写真を指差しながら鎌本は夾架を見上げたら、ギョッとした
鎌本は慌てふためき、顔を赤くしオロオロとしだす
『見えてるって…何が?ひあっ!!』
ここでも夾架の鈍感さが発揮された
何のことかと聞いて、返事がくる前に、何かに背の服を引っ張られ、身体の重心が後ろに持っていかれよろける
そのまま転ぶかと思いきや、夾架の身体はぽすりと何かにぶつかり収まる
「無防備に晒してんじゃねーよ」
『え、尊?』
頭上から声がしたということは、自分の服を引っ張り、そのまま受け止めたのは周防。ということなのだと理解する
だが、何故このような状況になったのかは全く理解できず
「薄紫に黒レースはいい感じっすね姐さん。十束さんすいません!!ごちそうさまっす」
『あー、そういうことね。ごめんごめん…』
言われてようやく気付く
薄紫をベースに、淵に黒のレース、それは今日の夾架の下着
屈んだ時に胸元が見えてしまった様だ
だが特に恥ずかしがることもなく、苦笑しつつ謝る
『尊がこういうことするなんて珍しいね。あ、でも初めてここに来て、出雲さんに手当てされてる時にコート貸してくれたよね』
案外そういうことに慣れてないのかな。と、自分を後ろから抱く周防を見上げた
真後ろに立つ周防を見上げるのは、ちと首にくるなーなんて思った
そうして周防を見上げてみれば、少しばかり頬を赤く染め、困ったような顔をしていたので、ゆっくりと周防の視線を辿ってみた
周防の視線の先には自分の胸元
服を引っ張られたために、肩がずり落ちて盛大にはだけ、谷間、下着、それらが周防からはちょうどよく見えていた
まだ15歳である鎌本に見られたことはどうでもよかった
しかし20にもなるキングに見られたということが、何故か恥ずかしくて、カアっと顔に熱が籠る
『尊のえっち!!///』
「…………悪い」
「もー、だからそういう肩口の広い服はダメだよって、俺言ったじゃないか」
『ゴメンナサイ……』
すぐさま周防から離れ、これでもかというくらいに服を引っ張り上げ、胸元を隠す
ゴメンとは言ったものの、こういう系統の服が好きだから、今後とも贔屓にするつもりだった
「尊、見たんか…際どいもん」
「うるせえ…」
すっかり周防は大人しくなってしまい、羞恥を隠すためにわざと機嫌の悪いオーラを醸し出していた
草薙は羨ましいと思った
どうせ自分には彼女いないし、夾架に少しでもちょっかいだすと、十束に射殺されそうな勢いで睨まれる
周防にはあまり怒らないくせに、何故自分にだけ…
『バイクかぁー…』
この状況の中、夾架の考えは少しだけズレていた
ずっと雑誌から目が離せなくて、未だにジッと見つめていた