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□とりあえず寝たい
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やってらんない。
伏見は嘆いた

ーなんで情報分析メインの俺がこんな任務に。

こんなどうでもいいこと、下の人間にやらせとけばいいだろ

自分にこの任務を割り当てた奴を恨みたくなった
しかし、今回の任務の相方が夾架であったから、そういった事の文句を珍しく言わなかった
夾架が他の男と2人で任務に当たる方が嫌だったのだ

『猿比古、とっても寒いね』

「ああ」

『こんな寒い日には、肉まんとかおでんとかいいよね』

「俺はコーンスープ派」

特務隊の激務は、労働基準法なんてまるで無視していた
早番の日だって、ノルマが終わらなかったら帰らせてもらえない
仕事はどんどん追加されていく一方だし、夜中に出動要請があったりで、常識なんてものは通用しなかった

非番の日は寝るに限る
一日中ベッドの上で過ごして、グータラのダメ人間だと思われたっていい
少しでも寝溜めておかないとやってらんない

夾架は深いため息を吐いた

『この辺治安悪いから、人っ子1人いないね。奴らの動きも全然ないし』

「悪いことし放題。ってとこだな」

『うん。だからこうして令状がだされてるんだよね。はあ…眠い』

夾架と伏見はとあるビルの屋上で張り込みをしていた

ストレイン絡みのとある組織がよくないことをしているらしい
この組織に目を止めたセプター4は、2人を派遣し、隣のビルの屋上から監視させていた

大ごとにはしないように、動きがありしだい速やかに拘束。という事だ

2人は昨晩からここにいた
今はもう空が白み始め、監視を始めてからかなりの時間がたっていた

吐く息は真っ白で、手も赤くなり、端末を操作するのも難しいほどに悴んでいた

寒い、眠い
疲労はピークにきていた

夾架はぐったりとフェンスにもたれ、頬杖をつき、辺りを見渡していた

何故交代要員をださないのか?
皆忙しいし、2人いるんだからなんとかして。
との、淡島からのお達しだった

交代交代で寝るのもありだったが、こんな寒い中じゃ寝れたもんじゃない
寝たら永眠してしまう、なんてわかりきっていた

雪が降ってないだけましだったが、これは尋常じゃない寒さ
若いからいける。なんて冗談はよして欲しい、若くても寒いのには限界があるのだ

しかし夾架は伏見の数倍寒いだろう
そこには伏見には解りえない寒さがあるのだ

『はー、寒い…』

「寒いのは知ってる。てか夾架、なんでそんな薄着なんだよ。お前いつからそんなバカになったんだよ…」

『別に好きでこの格好してるんじゃないの、これには深い訳が…。私こんな任務だよって何も知らされなまま、前の任務終わってすぐにここに連れてこられた感じだもん…だから着込む暇なんてなかったの。知ってたらこれの2倍…いや、5倍はあったかい格好してきたし』

伏見は任務の内容を事前に知らされていた。だからいつもより中に着こみ、マフラーをしていた。カイロも持ってきた。しかし、こんな長丁場になるとは思ってなかったので、わりと軽めの装備だった

夾架は知らなかった故に、いつも通り中にはインナーとシャツの2枚を着て、淡島のようなジャケットを着ているだけだった
そして健康的に露出された脚。ショートパンツから伸びる長い脚は生脚で、踝あたりまでのショートブーツ

そんな格好でこんな長時間外にいたら風邪をひいてしまう

「脚、大丈夫か?」

『なんとか大丈夫だよ』

膝や足首の辺りが赤くなっていて、痛いんだろうなと思う
伏見はズボン+ブーツだったからまだなんとかなっていたが、夾架をみていられなかった

「副長みたいなロングブーツ履けばいいだろ」

『ロング動きにくいからやだ。世理ちゃんみたいに動けないもん』

夏は群れて仕方ない。それに動きにくいから思うように戦えず、だったら普通のより短い物を履けば動きやすいだろうという事だった

「ならストッキングとかタイツ履けばいいだろ。それが嫌ならニーハイとか…」

『ストッキングとかタイツは伝線しちゃうかもだし。いちいち替えるのめんどくさい。ニーハイは、アンディとか日高が絶対領域がどうこうって煩いから嫌』

伏見がセプター4にくる前に、既に色々試されていた
しかし何を試しても自分にはあわなかった
こうして今の形で落ち着き、多少の寒さならこれで乗り切れた

そんな夾架を見兼ねた伏見は、自分が巻いていたマフラーをはずし、そのまま夾架に巻いてやる

『そんな胸元開いてるのに、マフラー外しちゃったら風邪引くよ?』

「俺はいい。てか夾架も人の事いえないだろ」

『んー、そうだね』

伏見の胸元のボタンの開け具合も結構だが、夾架も淡島ほどではないが露出はしていた

夾架は素直にマフラーに顔をうずめ、ふにゃりと笑う
先程まで伏見が身につけていたものなので、伏見の温もりがまだ残っており、余計に嬉しくなった

『あったかい…//』

「だろうな…」

『ありがと猿比古』

伏見は、自分が風邪をひくのはどうだってよかったが、夾架が風邪をひくのだけは御免だった

風邪をひけば休める。激務から解放されると考えれば、そんな寒さはどうってことなかった
寧ろ風邪こい。って思ってしまうほどにまで、伏見の根性は腐っている

「こっちの方があったまるだろ?」

『う、うん…//』

伏見は夾架を抱き寄せ、身体を密着させた
人肌というものは暖かいものだ
なんとかまだ暖かみのある、お互いの体温を共有し、冷えた身体をジワリジワリと暖める

2人きりだからこそ出来るもの
だが、伏見なら他に誰がいたって、こういう事をしてしまうのだろう
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