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□大切な君の
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十束さん誕生日&バレンタイン記念小説です


「キョウカ、あれなに?」

『あれはね、バレンタインに向けてチョコとかお菓子とか売ってるんだよ』

「バレンタイン?」

『そう。バレンタインはね、外国から伝わってきたイベントなんだけど、2月14日にね、女の子が友達や恋人とか大切な人に、チョコを贈る日なんだよ。この時期になると、ああやってチョコを売って、バレンタインを活気づけるの』

街にアンナと買い物に出ていた
度々見かけたのは、色々なお店のショーウィンドウなどが、ピンクや赤いハート、リボンなので可愛らしく飾り付けられ、色々なおしゃれなデザインの箱などがおかれ、女性たちが群がっていた

中には外で販売をしていたりで、美味しそうなお菓子がたくさん並んでいた

アンナはずっと気になっていたのか、夾架と繋がれた手を小さく引っ張り、バレンタインコーナーを指差し言った

ーもうこんな時期か。
早々に過ぎ行く季節。最近年が明けたばかりだと思っていたのだが、もうバレンタインは間近に迫っていた

「楽しそう…」

『凄く楽しいよ。売ってる物を買ってあげるんじゃなくて、手作りするのも楽しいんだよ。腕がなるんだよね、毎年』

夾架は料理が得意だった
和、洋、中なんだって作れるし、お菓子類も難なくこなしてしまう

市販の物を買ったらお金がかかる
だったら作ってしまえば楽だし、そこまでお金もかからない

大勢の吠舞羅のメンバーに喜んでもらうには、色々な物を作って振る舞うのが1番だった

「ミコトに…」

『尊にあげるの?』

「……うん」

『じゃあ、一緒に作ろっか』

アンナは一途でいい子だ
いつも周防にひっついてまわり、よほど好きなのだろう
バレンタインなど興味の欠片もなさそうな周防だが、きっとアンナがあげたら喜ぶだろう

いつも表情をかえず、お人形のようなアンナだが、今はどこか楽しげで、少しだけ笑ったように見えた

こうして一緒に買い物にでたり、お風呂に入って寝たり。なんだか妹が出来たみたいで、夾架は嬉しかった

『2月14日はね、バレンタインでもあるんだけど、多々良の誕生日でもあるんだよ。だからみんなでパーティーしようね』

「ごちそう…いっぱい?」

『もちろん。あたしと出雲がよりをかけて作るの』

「楽しみ」

去年の2月14日も、吠舞羅の皆でパーティーをした
メンバーの誕生日にはそれぞれお祝いをするが、バレンタイン兼十束の誕生日は、クリスマスの次に盛り上がるイベントかもしれない

パーティーのことは前々から草薙と話していたが、一点だけ問題があった


「で、なんで俺を連れ出すんだ」

『尊が暇そうにしてたから』

「暇じゃねえ。何で俺が十束の誕生日プレゼント選びに付き合わなきゃならねえんだ」

「暇そうにしてたから丁度良いじゃない」

ーこいつ、人の話を聞いちゃいない。
周防はバーのソファーで寝転がっていた
ウトウトしてきて、そのまま眠りの世界に誘われようとしていた…はずだった

なのに周防は、夾架に腕を引っ張られ、連れてこられるがまま街へと来ていた

何をするんだと聞けば、十束の誕生日プレゼントが決まらない。だから選ぶのを手伝って欲しい。とのことだった
そんなこと草薙に頼めばいいだろ。と言っても、出雲は暇じゃないからダメ。と返してくる

夾架に何を言っても無駄なのは分かっていた
周防は、まあたまにはいいか。と思い、夾架に連れまわされることにした

『男だったらさ、誕生日に何貰ったら嬉しい?』

「…んなの、人それぞれだろ」

『それじゃ参考にならない。多々良ってさ、やっぱアクセサリー身につけてること多いから、アクセサリーがいいのかなー…』

「別にそれでいいだろ。俺に聞く必要ねえ」

吠舞羅じゃ変わった奴なんていっぱいいるが、夾架は特に変わっていると周防は思う

十束と同じくどこか抜けていて、恐れというものを知らない
大抵周防に近付く者はどこか遠慮しているが、夾架は寧ろガンガンきていた
今まさにグイグイと周防の腕を引っ張っているのが、その証拠である


十束は高いアクセサリーは好まない
周防はシルバー系の物を好むが、十束はそういった類ではなかった
わりと安めに抑える庶民派

十束は身につける土台がいいので、安いアクセサリーでも何倍にもオシャレに見える
ピアスには少しお金をかけたらしいが、その会あって本人はご満悦だった

とりあえず色々なショップを見て回ろうということで入ったのは、十束好みのアクセが取り揃えられたお店

夾架は物凄く悩んでいた
うーん、とか、あー、とか、えー、などと、いう呻き声にも似た声をだしながら首をかしげていた

「どういったものをお探してすか?」

ずっと唸っていた夾架に声をかけるのは定員

『彼氏の誕生日プレゼントなんですけど…』

「そちらは彼氏さんですか?」

店員は周防の方を見ていた
どうやら周防を彼氏とみたようで、夾架はクスクスと笑い出す

『彼はただの付き添いです。あたしの彼は、もっとやわらかーい雰囲気でいい人ですから』

「帰るぞ」

『ちょっ、ごめんってば!!美味しいコーヒー豆買ってあげるから!』

冗談で行ったつもりだったが、周防は帰ろうとしてしまった
ここまで来て、あとは選ぶだけなのに、肝心なところで帰られてしまったら一溜まりもない

酒以外のものを飲むときは基本コーヒーな周防のために、ずっと目をつけていたコーヒー豆の存在を明らかにすれば、どうやら此処にいてくれる気になったらしい

いまいちペースが掴めない

周防はモヤモヤとする気持ちを押し殺して、深々と溜め息を吐く

『そんなに溜め息ついてると、幸せ逃げちゃうよ』

「うっせえ……」

『いたたた…いひゃいって…』

ー誰のせいでため息を吐いているんだ。
周防は夾架の頬をつねり、引っ張る
幸せなんて、王になった時点でどうでもいいことだった

再び周防は溜め息を吐いた
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