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□大切な君の
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「おかえり。良い物買えたか?」

『うん。多々良は?』

「アンナと上で昼寝しとる」

『そっかー。あたしも添い寝してこよっかな…。いや、いないうちにパーティーのこと話しちゃおうか』

バー内には草薙しかいなかった
閑散とした空気の中、周防はドカリとソファーに座り、煙草に火を付ける

機嫌は悪そうだが、後で豆をひいて、コーヒーを淹れてあげたら機嫌も治るだろう

夾架は買ってきたものを傍におき、カウンターのスツールに腰掛ける

「準備してる間、どうやって十束追い出すんや」

『普通にパーティーすることはわかってると思うから、準備終わるまで帰ってこないで。って言って、尊とどっかフラつかせてればいいかなー』

「せやな」

煙草を吸いながら曖昧にだが、2人の会話を聞いていた
ーなんで俺も追い出されるんだ。
夾架に突っ込んだところでどうにもならない
周防ですら、夾架に口喧嘩では勝てない。随分と口が達者なのだ

それから料理をどうするか話して、大まかなことは決まった


そして迎えた当日。

『それじゃ行ってらっしゃい!』

「はーい。行こっかキング」

「ああ…」

夾架は笑顔で十束と周防を送り出し、2人が完全にいなくなったことを確認すると、途端に草薙とカウンター内へと駆け込む
とても慌ただしい様子で作業を始めた

「なんでそんな急いでんすか…?」

「あんま時間ないんや。はよ準備せなあかん。八田、伏見、お前らも早く飾り付け始めや」

草薙に言われてしまったら仕方ない
面倒くさいながらも、渋々伏見が動き出せば八田も動き出す

鎌本が2階にしまっておいた飾り付け道具を持って来てくれ、鎌本が率先して八田、伏見を動かし飾り付けを始める

あまり広くないカウンター内で、2人が作業するのにはスペースが足りない
何度もぶつかりながらも、なんとかやっていた

「そっちはどれくらい進んでるんや?」

『えっとね、クッキーは昨日作ってきたんだよ。あとケーキのスポンジも焼いてきたから、ここで飾り付けかな。それからゼリーとかプリンとかは今作って、あ、チョコも作んなきゃ』

「用意周到やな。そっちの面は頼んだで」

例年のごとく準備はしていた
しかし、これ以上は当日するしかなくて、見込まれるのはオーブンの混雑
草薙も料理を作るのに使い、夾架も使う。だから2人は急いでいた

ガラの悪い男たちが、凝った料理作りの手伝いを出来るわけがない
だから、主要メンバーのみがここにいて、あとは適当な時間に来いと言ってある

「手伝うこと、ある?」

忙しそうな夾架と草薙を見て、少しでも手伝うことがあるならやりたい、とアンナは言う
カウンター内の内側に入ってきて、夾架の服の裾を掴む

『いっぱいあるよ。じゃあこれ、お願いできるかな。このボウルに、この粉いれて、これで混ぜて』

「わかった」

アンナにはゼリー作りを任せた
暖めたジュースに、ゼラチンをいれ、泡立て器で混ぜて欲しい。と夾架は頼んだら、アンナはコクコクと頷き頭を上下に振る

これで少し楽になった
夾架はプリン作りに励み続ける

色々作っているうちに、仄かな甘い香りと、香ばしいような匂いが、食欲をそそる素敵な空間を作っていた
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