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□大切な君の
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準備は順調だ
忙しさも少しは落ち着いてきて、この調子なら間に合いそうだと確信する
そろそろ休憩が欲しい頃だと草薙は思う
「疲れたやろ。休憩でもしよか」
「うぉっしゃー!!」
『じゃあ少しクッキーだそっか。結構作ってきたし、小腹も空いてきたし、味見して欲しいから丁度いいや』
草薙が休憩といえば、八田は持っていた飾りを放り投げる
夾架は持ってきた大量の荷物の中から、クッキーの入ったタッパーを取り出して皿に移した
「何飲む?夾架、酒はダメやで」
『い、いや、まさか…。呑みたいなーなんてこれっぽっちも思ってない…かな…』
嘘。バイオレットフィズと言おうとしていた
しかし、言う前にダメと言われてしまったので、図星の夾架はどもってしまう
しゅんと項垂れながら、アールグレイを頼む
八田と鎌本はコーラ。伏見はコーヒー。アンナはブラッドオレンジジュース。注文にばらつきがでてしまい、草薙も大変だろうと思い、夾架も草薙の隣に立つ
『あたしも手伝うね』
「助かるわ」
草薙は茶葉などを取り出し、夾架はカップを取り出す
それから、置いてあるポットを手にしようとしたとき、2人同時に同じ動きをしたので、手が重なり触れた
『あっ、ご、ごめん…///』
「お、おう…///」
すぐに伸ばしていた手を引っ込め、2人して顔を真っ赤にして、互いに背を向けてしまった
「何少女マンガみたいなことしてんすか…。十束さんに言いつけますよ」
「それだけは勘弁してや。あいつ、後が怖いんや…」
伏見は草薙を蔑んだ目で見ていた
十束に言う。の一言で草薙は慌てふためき、血相をかえた
夾架が誰かに何かされたことが十束に伝わると、草薙ですら恐怖を感じることが起こる
それは恐ろしい恐ろしい、思い出すだけで身体が震えあがる程のもの
ーーーーーー
「キョウカ…こんな感じ?」
『うん。すっごく上手いわ!流石アンナね』
夾架とアンナはケーキの飾り付けをしていた
クリームを絞って、フルーツをのせて、とアンナを中心にやっていた
きゃっきゃわいわいと女子2人が楽しげにやっていて、男4人はその光景を微笑ましく思い見守っていた
『ここにこれのせて…よし!完成!!』
「できた…」
何個めかのケーキの飾り付けを終え、出来上がるたびに夾架とアンナは喜んでいた
出来栄えは無論バッチリで、完成したものを見て、うんうんと頷き、改めてその完成度の高さに自惚れた
『見て見て出雲!!このケーキ、凄く良く出来てると思わない?』
「ああ、すっごく美味そうやな」
皿を持ち上げて草薙によく見えるようにした
「夾架、ここにクリームついて…って……」
草薙が、夾架の頬にクリームをしてきし、取らせようとした
しかし、ペロリ。
本人が動くよりも早く、伏見がペロリと舌で舐めとる
『ひゃっ//さ、さるひこ…///』
「甘…」
夾架は驚いてケーキを落としそうになるが、伏見がしっかりと支えていた
夾架アンナの努力の結晶を台無しにするわけにはいかない
草薙は絶句していた
「おま…十束に言いつけるで…。これは俺より重罪や…」
草薙がそういうが、伏見はしれっとした態度だった
「バレなきゃいーんすよ。まあお互い様ってことでいいんじゃないすか」
「……………せやな」