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□大事なのは愛
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VD.BD記念小説<大切な君の>の続編であり、ホワイトデー記念の小説です
単体で読んでも話は分かりますが、前作を読んでからこちらを読むことを推奨します



3月13日
午後3時すぎ。所謂おやつの時間。

「えっらい山やなあ…」

『そうなの。自分でもビックリよ。こっちは食べ物で、こっちは食べられないもの。やっぱ女って何かと得するよね』

「そう言えるのは今だけなんとちゃうか?これからは女だけが辛い思いするんや」

『あー、そういえばそうよねー…』

カウンターのテーブルの上に山ができていた
綺麗にラッピングされた箱が積み上げられ、山は2つに別れている

スツールに座る夾架はこっちは食べ物で、こっちは食べられない物だ。と指差しながら草薙に説明した

『今食べてるのがさんちゃんから貰ったものなの。でね、翔ちゃんからはマグカップもらったの』

「そのケーキは?」

『これは鎌本。すっごい有名なパティシエのお店のなんだけどね、わざわざ並んで買ってきてくれたの』

「へぇー。よかったやないか」

『うん。やっぱりさ、甘いもの食べてるときが1番幸せだよね』

ショートケーキを目の前に、皿の奥には箱の山。夾架の右手にはフォークが握られ、左手にはチョコレート。皿のすぐ横にホットミルク。
異様な光景だった

凄く贅沢に、優雅なおやつタイムを楽しんでいて、目の前でそんな姿を見せられ草薙は苦笑いするしかなかった

「幸せなんわいいけど、今日はまだ13日やで。ホワイトデーは明日やないん?」

『うん、そうなんだけどさ、皆が明日はどうせ多々良とイチャイチャがどうこうで、忙しいだろうから今日渡しちゃうねって。そんな気遣わなくてよかったのにさ』

「まあその気持ちもわからなくもないな」

『えー…そーかなあ…』

そういいながらもケーキをパクリと一口
一口が随分小さく、大事に食べているのだろうと見ればわかる
口に含んだら必ずうっとりと幸せそうな表情をし、草薙もその笑顔を見てるだけでなんだか癒される


そんな2人をよそに、十束は気持ち良さそうに昼寝をしていた
自分の昼寝場所だ。と言い張っているソファーの上で布団にくるまっていて、まるで芋虫
だがいつものことなので、自分で起きるまでは、基本的に起こさない

だんだんと盛り上がっていく2人の会話の声で、十束は夢の世界から連れ戻された

「んー……」

眠たいながらもモゾモゾと起き上がり、まだ霞む目を擦る

『あ、起きたのね。おはよう』

「おはよー…」

物音で十束が目を覚ましたのだと気付き、夾架はスツールを90°回転さへて十束を見る

十束は布団を剥ぎ、立ち上がって身体を軽く動かす
今日も気持ちよく寝れ、満足。といった表情をしていた

自分もカウンターの方へ行き、夾架の隣に座り夾架の手元に座り草薙と同じく苦笑い

「なんか凄いねー…胃もたれしそー」

『しないよー。せっかくもらったものだから、早く食べないと悪いからね。まあ、甘いものならいくらでもいけるし』

「せやけどそれは流石に凄いわ」

お昼も普通にリゾットを完食していたのに、この食欲はどこからくるんだ。なんて思っていたら、甘いものは別腹なの。と軽くあしらわれてしまった

「そんなに食べたら太っちゃうよー」

『太ってもあたしのこと好きでいてね』

「えー、俺そんな自信ないなー。そっちの趣味あるわけじゃないし」

ズズッとホットミルクを啜り、クスクスと笑いながら呟いた
十束の反応がどんな感じなのか見たくて、冗談のつもりで言えば、やんわりと否定されてしまったが、夾架は特に気にすることなくケーキを食べる

「まあ夾架は太らないからね」

『そーそー、そういうことだからいいんです』

なんてったって、太らない体質だから。なんて、少し杞憂しなさすぎかもしれないけど、しっかり動いているから大丈夫だと思っている
行事のときはやはり特別だ
普段からこんなにも甘いものをバクバク食べているわけではない
たまに。ということが至上なのだ

「そっか、明日ホワイトデーだっけ。みんな律儀だね、結構高そうな奴多いし」

「夾架からしか貰えんかった奴も多いやろ。返す人が少ないほど、一個分の予算が多くなるから、そりゃ豪華になるよなあ」

『そっかあー…男の人のお財布事情ってなんか凄そうだよね』

わりと使い方荒そうだし、でもそうでもない気もする
他人の為の出費というものはどうしても、やっぱり少なく抑えたいはずなのだろうけど、十束の言う通りで箱らを見てる限りどれも高そうだった

『2人共、明日のこと忘れてないよね?』

だいたいのメンバーからは貰った
本題は明日なのだが、はたして2人はきちんと用意したのか

「俺は一昨日買いに行ったんや。ええもん買えたから楽しみにしとき、きっと気に入るで」

『ほお…それは楽しみ。多々良は?』

「もちろん忘れてないよ。因みに俺は2週間前には既に買ってあります。すっごく良い物見つけたから、即決しちゃったんだよねー」

それも楽しみだ。2人とも、余程自信があるということなので、夾架も期待していた

食べられるものと食べられないもの。
どちらがいいかと聞かれたら、恐らく凄く迷い、結果どちらでも良いと言うはず

好きな色は?とか聞かれても、特に希望はないので、それもなんでも良いと答えるだろう

とりあえず貰えるものは有難く貰っておくし、プレゼントはやはり嬉しいものだ

アンナも明日を楽しみにしているようだ
明日は周防と2人で出かけるらしく、そこで欲しい物を買ってやると、草薙から聞いた

周防が意外としっかりしていたので、少し驚きながらも、最近の2人をまるで本物の親子か兄妹の様だと感じていた
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