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□Everyday
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『今日は何の日でしょーかっ!!』

「知らねー。猿比古知ってる?」

「俺も知らない」

昼休み、通常なら立ち入り禁止の屋上で、夾架、八田、伏見の仲良し3人組は昼食をとっている

普通なら誰も屋上に立ち入れない様にと、鍵がかかっていて、その鍵は職員室にて保管される
しかしその鍵は古くなり、壊れてしまい常に空いた状態

たまたまそれを見つけた3人は、昼休みや授業をサボりたい時、必ず此処にたまる

今もこうして屋上でのほほんとしているのだ

夾架はいつもより機嫌が良かった
先程寄った食堂で、数量限定のチョコチップメロンパンが手に入ったとかなんとか
恐らくそれだけではなさそうだった

いつもよりハイなテンションで、八田と伏見に話を持ちかけたら、軽くあしらわれてしまった

2人はもそもそとパンを食べ、紙パックのジュースを啜り、各々の食事に集中している

いつも以上に冷たい2人の反応に夾架はむすっとし、頬を膨らます

「拗ねんなよ。マジで知らねえんだから、勘弁してくれよなー…」

「今日って11月11日?それがどうかしたのか」

『…ほんとに知らないんだー…てっきりあたしのことからかってんのかと思った』

拗ねてしまった夾架の相手はめんどくさい
八田は慌てて夾架の機嫌を取ろうとするが、知らないことは知らないので、話に乗れない

夾架は深々と溜め息を吐き、隣に置いてある鞄の中をゴソゴソと漁り始めた

その様子を2人はじっと見つめ、頭の上にはクエスチョンマークを浮かべていた

『じゃーん!!ポッキー!!』

「あぁ、そういやそんな日だったな」

『思い出した?11月11日はポッキーの日!せっかくだからさ、3人で食べようって思って買ってきたの』

夾架が鞄から取り出したポッキーを見て、最近よくCMで流れていたのを思い出した

そんなの企業が、儲けが欲しいがためだけに作った、くだらない企画の一部に過ぎない。伏見はそう思っていた
くだらない。の一点張りだったので、自分には関係ないから。と、頭の中からその日のことを消し去っていた
しかし、その企業の策略にまんまと嵌められてしまっているノリノリな夾架を見て、伏見は盛大に溜め息を吐く

単純な奴だ。そう思ったが、本人が楽しそうなら別にいい

何と言っても、夾架の笑顔が好きだから
その笑顔を見れるなら、理由はなんだっていい

「まあ普段あんま食わねえから、こういう時に食べときたいよな」

『そーゆーことっ』

八田も思い出したようで、既に乗り気だった
早く開けろよ。と夾架をせかし、開封を待ち望んでいた
その八田には犬の耳と尻尾が見えそうだった
凄く嬉しそうに夾架の手元を見つめていた

夾架は急かされながらも、待って。と言いながら箱を開け、袋を1つ開けた

2袋入っているのだが、1袋でも十分な量で、3人で食後のおやつとして食べるのにはちょうど良かった

「いただきまーすっ」

『どーぞ。ほら、早く猿比古も食べなよ。この分だと、美咲に全部食べられちゃうよ?』

八田はぽりぽりと軽快な音をたてながら、既に2本めに突入していた
久しぶりに食べたら意外と美味しくて、つい手が伸びてしまう

夾架も1本めを口に咥えながら、伏見にも1本差し出す

だが伏見は差し出されたポッキーを受け取らずに、ずいっと夾架に顔を近づけ、夾架が咥えているポッキーに噛み付く

『ひあっ//』

いきなり近づいてきた伏見に驚いた夾架が身じろぐと、ポキ。という音がし、ポッキーは半分に折れてしまった

そしてすかさず、チッという伏見の舌打ち

『なっ、ななな、何するのさ!///こっち食べたらいいじゃない、何もあたしの取らなくったって…//』

「そっちのが美味そうだった。何か文句あんのか?」

『味が違うわけないでしょ!バカ比古!!///』

ポカポカと、全く力の入ってない拳で胸を叩かれても痛くも痒くもない
そんな仕草も可愛くて、伏見は夾架の後頭部をがっしりと抑え、自分の胸へと顔を埋めさせる

『ちょ、ちょっと猿比古!!何してんの、食べれないでしょ!』

がっちりと後頭部を押さえつけられ夾架はジタバタと暴れるが、ホールドされてしまっているために、その抵抗は無駄となる

「美咲、1本ちょうだい」

「ん、おお」

既に夾架の手から八田の手へと回っているポッキー
伏見は八田から1本貰い、チョコが付いた先の方を咥えずに、あえて何もついていない棒の方を咥えた

そして夾架の後頭部を押さえつける手を離し、再び自分の顔を近づける

『へ??』

「食べたいんだろ?ほら、食えよ」

『やっ、ちょ、猿比古!?』

ずいっと伏見が顔を近づければ、恥ずかしくなり、夾架は頑なに閉ざした口を薄く開き、ポッキーの先を少しだけ咥えた

おそらくキスするまでエンドレスリピート、何度でもするつもりだろう、押さえつけからは解放されない

伏見は夾架が先を咥えたのを確認すると、折らないようにしながら食べ進めた

夾架は、何のために恥ずかしい思いをしているのかと考えた末、ポッキーが食べたかったので伏見に負けじと食べる

八田は黙ってその様子を見ている
ポキポキ、とポッキーを食べる音がやけに大きく感じ、ポッキーが短くなる度に、夾架の心臓は大きく跳ねる

『っ///』

「………」

伏見の顔が目の前にきて、もう唇が触れそうなくらい
夾架はぎゅっと目を閉じて、最後の一口をぱきり

ちゅ。と唇と唇が触れ合って、ポッキーゲームは成功した

夾架はすぐさま離れ、伏見から顔をそらして顔を赤くする

「今更恥ずかしがってんじゃねえよ」

「猿比古ずりーぞ」

「美咲もすればいいじゃん」

自分があれだけ恥ずかしい思いをしたのにも関わらず、伏見が余りにもしれっとしていたので、夾架は余計に恥ずかしくなる

恥ずかしいのは自分だけ?

『てかさ、このゲーム誰が考えたのよ。これいちいちする必要なくない?』

「こうでもしねえとさせてくんないだろ??」

『あ、あたしは別に…。し、したいならフツーに、すればいいじゃないバカ!!///』

更に顔を赤くして、膝を抱えて膝に顔を埋めてしまう
本当に恥ずかしいったらありゃしない

伏見は夾架の言葉に、思わず持っていた端末を地面に落としてしまい、唖然としている

「…ツンデレ」

『ツンデレじゃないわよバカ!//』

「いや、ツンデレだよな、夾架は」

『う、うるさい!!//』

恥ずかしくなると、どうしてもツンとしたくなってしまう
普段はデレているのに、恥ずかしくなると本当にダメだと思う
自分でも分かっているけど、言われてしまうと尚更いやだ

はあ、と軽く溜め息をついていると、伏見に腕を引っ張られて、身体が動く
いつの間にか伏見の腕の中にいて、伏見の顔が近づいてくる
触れるか触れないかぐらいのところまで近付き、ジッと見つめられ、視線が痛い

八田も八田で、先程から少ししか喋らない
伏見のことを止めてほしいのだが、どうやら止める気はないらしい

ジッと見つめるだけの伏見からは、何をする気配も感じられない
痺れを切らした夾架は、おずおずと伏見に問う

『な、何さ…//』

「目ぇ閉じろよバーカ。何、このままがいいわけ?」

『う、わ、分かってるわよ!!///』

伏見に言われ、夾架はぎゅっと目を閉じた
流石に目を開けたままなんて嫌だ、どこ見ていいのかも分からない
自分は目を閉じるけど、なんとなく伏見は開けているのだろうと分かる

伏見がフッと鼻で笑った音がすると、軽く口付けされて、それから小さく口を開くと口内に伏見の舌が滑り込んできて、夾架の下を絡め取る

歯列をなぞり、舌を吸われ、静かな空間に水音がやけに響く
ねっとりと絡んだ舌が熱く感じる
既にどちらの唾液か分からないものが、口端から零れ、そろそろ息も苦しくなってくる

夾架は伏見の胸板を軽く押すと、伏見は離れクスリと笑った

「肺活量少なすぎ」

『うるさいな!!//んっ、ちょっと、んー!!!』

そう言ってる間にも再び口を塞がれて、もう1度濃厚なキスをする
長く続けよう、と思っても無理で、再び離れ伏見の頬を抓る

『もー、なにすんの!//ほんとやめてよね!!』

「おー…つい夾架ちゃんが可愛くて…」

『アホなこと言わないのバカ猿!!あと猿比古がちゃん付けとかほんと企んでるよーにしか聞こえないからだめっ』

「なに、美咲妬いてんのー??」

「なっ、妬いてなんかねえよ!!//」

ピーピーわーわー言っている夾架を他所に、伏見が八田へと視線を移せば、八田は自分らの様子を凝視していたもんで、ついいつもの癖でからかいたくなってしまう
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