short
□Everyday
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何度もこの様子をみている癖に、未だに慣れず、八田は顔を赤くしている
「DT」
「るせえよ!!//自分だけしやがってよお…」
「さっきも言っただろ?美咲もすればいいって」
「は、はあ!?//だ、第一コイツが許さねえだろ!///」
顔を真っ赤にしながら頭を振る八田の姿は、本当に初々しいというか、伏見の言うとおり童貞丸出し
自分の横で自分の話をされている夾架は、恥ずかしいながらも、ぼそりと呟いた
『い、いいよ、別に…///』
まさかの返答に伏見も驚かざるをえなかった
夾架はポッキーを1本持ち、八田へと近づく
だが八田はそれに伴って後ずさる
「う、お、おい…なんだよ…//」
『ね、美咲、しよ?』
なんだかもう色気がありすぎて仕方なかった
夾架もまだ恥ずかしいのか、頬を紅潮させながらも必死に八田を見つめ、説得しようとしている
先程のツンと、羞恥は既に何処かへ行ってしまっている
ノリ。で全てが片付いてしまっていて、時々夾架のノリというものが怖くなる
八田にチョコのついてない方を加えさせる
夾架がチョコの方から食べる。ということだけは譲れない
それから夾架は八田の肩に手を起き、目を閉じながら、まるでキスをするかのように近付く
八田もほんの少したじろいだが、男は度胸。ぐいっと夾架の腰を引き寄せてポッキーにかじりつく
ポキ、ポキ、ポキ
先程の八田と同じように伏見も無言で様子を見、ハイペースでポッキーは短くなっていく
照れてるのかな。八田の様子が気になった夾架がちらりと目を開けてみると、八田はジッと此方を見ていて、目が合う
それから、唇がぶつかる程度のキスをして、すぐに夾架は離れてしまった
八田と目があったのが恥ずかしくて、逸らしたくなった
『……///』
「んだよ」
思ったよりも八田が平常で、本当に驚かされた
夾架が八田に背を向け、なんとか平常心を取り戻させようとしていると、後ろから手が伸びてくる
『ひあっ!?』
不意に身体を引っ張られ、夾架の口からは頓狂な声がでる
しかしその声は途中で発することができなくなる
『んっ、ふ……っ//』
口の中に舌のような熱いものが滑り込んできて、八田にキスされているのだと気づく
八田の精一杯さが良く伝わってくる
伏見ほど上手いというわけではないが、情熱的な激しいキスである
啄ばむようなキスで、伏見よりも苦しい
いきなりだったので、あまり心の準備が整ってなく、呼吸も乱れてしまい、すぐに限界に達する
トンと八田の胸を叩けば八田は渋々離れた
「おめー、んとに肺活量ねえな」
『なによ、最初は鼻で息できなかったくせに!!美咲のバーカ!!!///』
伏見に言われ傷ついたばかりなのに、更にぐっさりと心に刺さる
特に鍛えているわけではないが、運動は得意
それでも辛いものは辛いんだ。なんて心の中で思っても2人には分かってもらえぬ
『もうほんと美咲のバカ!!信じらんない!』
「はあ!?別にキスぐらい大したことねーだろ?」
『た、確かにそーかもしんないけどさ!!//』
「サルはよくて、おれがダメな理由、ないだろ??」
『そ、そうだけどさ…バカ…///』
八田のくせに言ってることは正論だ
そう言われてしまえば、夾架は何も言えなくなる
深く深くため息を吐いて、やけ食いのごとく1人でポッキーをぽりぽりと食べ始める
「美咲、やるじゃん」
「お前には負けらんねーからな。つーか名前で呼ぶんじゃねえよ」
「美咲しつこい。美咲は美咲なんだから、美咲でもいいだろ。お前、もしも将来婿養子になったら、八田じゃなくなるんだぞ」
「なるつもりねえし!」
「んなの、まだわかんないだろ?」
うるさいなー。と思いつつ、夾架は2人の話を聞いていた
聞いてて飽きないのだが、毎回よくやるなと思う
仲が良いのか悪いのか。というと、多分いいのだろう
余り気にしてはいなかったが、最近の2人の、夾架についての口論は激しい
少々ヒートアップし、互いが互の胸ぐらを掴みあっていた
決して本気の喧嘩ではないのだが、やりすぎていると思う
夾架は再びため息を吐きながら2人を白い目で見る
『ちょっとやめてよねー』
「お前は黙ってろ」
『…何ですって。じゃあこう言えばいい?…やめて2人共!あたしを取り合って喧嘩しないで!……満足?』
伏見に黙れと言われたが、このままだと埒が明かない
止めなきゃ更に喧嘩は激しくなり、怪我なんてものはして欲しくない
奥の手でもある、少女漫画にありきたりなセリフを、すさまじく感情をこめて言えば、2人の動きはピタリと止まり、今度は逆に白い目で見られた
『なにさ、そんな目で見ないでよバカ』
「お前が悪い」
『はあ!?なんでここであたしがでてくるわけ?2人が勝手に喧嘩してるだけじゃない』
いきなり言われた訳のわからない伏見の言葉に夾架は驚く
夾架が驚いていれば、八田に迫られる
「なあ夾架。お前さ、どっちが好きなわけ?」
『ど、どっちといいますと…?』
「だぁーかーらー、俺と猿比古、どっちが好きなのか聞いてんだよ!」
ずいっと迫ってくる八田の顔が近くて、まるでキスをする少し前のようだ
『は!?今更そんなこと聞く!?』
あまりにも八田の質問がおかしくて、夾架は吃驚してしまった
夾架の反応があまりにも大げさすぎて、八田も苦笑いする
自分的にはわからないから聞いたつもりなのだが、あまりにも夾架とは反応が違いすぎて、どうしたもんだと八田は思う
「だってよー、まあ俺ら、1年のときからこんなんだしよ。その…」
『こんなんって、チューしたりとか、そんな感じのことを普通にしてる。ってこと?』
「お、おう…最初は事故だっただろ?でもそっからなんつーか、こう、ノリでこうなってよ」
「何、美咲んなこと気にしてんの?なんか女々しいな」
「るせえクソ猿」
少しタジタジでだが、八田が言えば、伏見までキョトンとした顔をしていた
疑問に思っていたのが自分だけ。と気づいたら、少しばかり恥ずかしくなってくる
だが気になっていることは確かだ
初めは八田が言ったとおり、事故であった
屋上から下る階段を降りていたところ、夾架が足を滑らせて落ちそうになり、それを受け止めようとした八田と口がぶつかった
八田は既に階段を下りきっていて、夾架が落ちてきても何の問題もなかったが、落ちる際にスカートがめくれ上がり、中身が丸見えでモロに見てしまい驚いた八田も体制を崩し、八田の上に夾架が乗る形になってしまった
ひょんなことから互いのファーストキスは失われた
恐らく伏見のファーストキスはとっくになくなっていたが、密かにではないが思いを寄せていた夾架のファーストキスが八田という童貞丸出しの男に、不覚にも奪われてしまい、それがどうしても気に食わなかった
その直後、消毒という名の名目で、伏見も夾架の唇を奪った
それから次の日も、その次の日も、伏見が夾架にキスをするようになり、それに負けじと八田も同じ分だけキスをする
初めはフレンチだったものも、段々とエスカレートし、ディープなものへと変わっていた
大いに恥ずかしがっていた夾架も、今ではほんの少し赤面するだけ。というまでに慣れてきていて、しれっとしている
慣れ。というものは怖いものだ