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□王サマとSummer?
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『尊!浮き輪膨らませて!』
「泳げねぇのか」
『人間は陸で生活する生き物です。泳げなくても生きていけます』
「泳ぎくらい普通に出来るもんだろ」
『出来ない!沈む!』
「胸以外に大した脂肪がねぇ筋肉質だからな」
『そーそー!日々の努力の賜物!って胸を触らない!膨らませて!』
もう一度べしっと叩いてやれば流石にムスッとして、でもアスリート並に凄い肺活量で浮き輪を膨らませてくれた
アヒルちゃんの浮き輪を一生懸命膨らませてる尊が可愛くて可愛くて笑ってしまった
輪っかの部分が胴体になってて、頭と首も付いてるんだよ、中々面白可愛い浮き輪でしょ
アンナが選んでくれたの
アンナのはおんなじタイプのフラミンゴくんなんだよ
あっという間に膨らみ形成されたアヒルちゃんの輪の中に体を通していざ海へ!!
海に入るのを嫌がってた尊も、あたしに連れられ観念したのか、嫌そうな顔はしてない
輪っかにお尻をはめ込んで、アヒルちゃんの首と頭に足を跨らせて水には浸からずに浮いていた
尊はその横で仰向けに寝そべるように浮かんで頭だけを水中から出している
『尊も筋肉の塊のような人なのになぜ浮く……』
「おめぇが下手くそなだけだろ」
『ひど。ね、楽しい?』
「別に楽しかねーよ」
ぼーっと空を見ていた尊だけど、あたしに問いかけられて視線だけをあたしにくれた
相変わらず浮いたまんま、凄いなぁ
『あたしは楽しいよ。尊と海に入れて嬉しいし』
「夾架が良いならそれでいい」
おおおおお?今夾架って呼んでくれた!?
記憶に寄ると1ヶ月間くらいは呼んでもらってなかったよ!?
一気に体温が1度くらい上がった気がする
『やばい、もっかい名前呼んで』
「…夾架」
『もっかい』
「……夾架」
『うーー、やばい!超レア!中々呼んでくれないのにどーしたの!?恥ずかしすぎてやば……尊めちゃくちゃ格好良い、好き…////』
ほんとにたまにしか呼んでくれない(そのたまにが基本夜)のに、どうしちゃったのかな
嬉しすぎて顔がにやける
アヒルちゃんの頭に顔を埋めていると、急に浮き輪の右側が持ち上がって斜めになる
『え、ちょ!待って!きゃーーー!!!』
ボチャンって音と共にあたしは海に投げ出された
口に水入った!しょっぱい!!
じゃなくてあたし泳げないんだってば
沈む沈む沈む沈む沈む!!
水中で目も開けられないから暗中模索状態で手足をバタバタと動かして、なんとか尊らしきものを捕まえてそれを支えに浮上する
『ゲホッ、うぇっ、あたしを殺す気か!?』
「ほんとに泳げねぇんだな」
『試したわね!!』
自力での浮き方を知らないから、尊の首に一生懸命しがみついているしかない
顔まで水につける予定はなかったけど、念には念で、ウォータープルーフのアイメイクにしてきて良かった
「おもしれぇことになってんな」
『えーん……尊のばか、ひどい……』
「悪かったからんな拗ねんな」
尊も水に浸かってたから髪がぺったんこ
あたしの髪もぺったんこで顔面に張り付いてる
でも手は離せないから髪を掻き分けられなくて、多分ワカメみたいになってるのを尊は笑ってるんだと思う
尊が自分の髪を掻き分けた後に、あたしの髪も掻き分けてくれて、バチッと視線が交わった
その瞬間にうるさいくらいに心臓が跳ねた
水も滴る良い男?
やばい、格好よすぎる
どんどん顔に熱が登るのを感じる
すると尊が珍しくクスッと声を漏らして笑った
「可愛いじゃねぇか」
『……!///』
尊がふんわりと笑った
笑う時は普段の仏頂面と打って変わって優しい顔になるのだけど、今日の笑顔は過去最高に柔らかい
そんな笑顔反則……
『あーーもう尊はズルい、ほんと好き』
「なんだ急に」
そんな柔らかい笑みを浮かべる尊に急激にキスがしたくなった
どうせ誰も見てないしって事でキスしちゃった
「誘ってんのか」
『違いますー。夜までのお楽しみだもーん』
べーっと舌を出して笑って、もう1回キスをする
たまには、ね?
誘いじゃないと言ってるものの、そう受け取っている尊は後頭部を鷲づかんで強引にキスをしてくる
それもまた悪くない
キスだけならいいや、どうせ誰も見てないし
徐々に深くなる口付け
こんな素敵な海で夢中になって交わすキス、うーん素敵
折角海に来たんだから、普通のカップルっぽい事くらいしてもいいよね?
「キングー!夾架ー!!イチャついてないでスイカ割りやろーよー!!!」
『っ!?/////』
誰もいないのをいい事にキスをしていたのだが、急に浜辺の方からあたしたちを呼ぶ声が聞こえて、2人してハッとなって唇を離して声の方向を見た
あたし達が海に入ったところと、みんなが泳いでたところの中間地点あたりかな
波打ち際で多々良が手を振ってる、多々良のもう片方の手はアンナと繋がれていて、棒立ちになってあたしたちをじっと見つめていた
わりと遠いけど目はいいからよく見える
『うっわー見られた……///』
「減るもんじゃねぇからいいだろ」
『尊は恥じらいってもんを知らないよね、まあいいや。スイカ割りしに行こ!』
今行くー!って多々良達に向かって言って、アヒルちゃんの輪っかに体を通して、そのアヒルちゃんを尊が引っ張って陸に上がった
『ふー、泳いだ泳いだ』
「あれは泳いだとは言わねぇ。アヒルに乗っかってただけだろ」
『細かいことは気にしちゃだめだよ〜』
アヒルちゃんも水からあげて、うーんと腕を上に伸ばして体をほぐした
すると多々良の隣にいたアンナがあたしのすぐ近くやってきて、あたしの事をじっと見つめた
「……キョウカ、赤くなってる。ケガ、したの?」
『え、ほんと?どこ?』
「この辺にいっぱい」
なんかしたっけな
どこ?っ聞くと、アンナは自分の指で自分の上半身に円を書くようにして場所を教えてくれた
確認する為、顎をひいて自分の上半身を見る
胸はセプター4のおっぱいお姉さんほど大きくなく普通サイズだけど、腹は縦線入るくらい引き締まってるから上体を若干屈めないと見えないので、屈めて見てみた
『んー?どれどれ?あ、』
「あ、」
「あぁ」
あたし、多々良、尊の順に口をポカンと開けて3人で顔を見合わせた後に、必要最低限隠すべき所だけ覆われたあたしの上半身へと視線が集まる
そうか、赤色しかみえないんだもんな
そうだよね、あたしの上半身真っ赤っかだもんね、水玉模様にでも見えるのかな
なるほどね、うんうん
『〜〜〜っっ!!!////』
うんうんなんていってる場合じゃない!
つい海が気持ちよくて、楽しくて、2人だけだったから忘れてた
恥ずかしさのあまり声が声にすらならない
隠すものもないので膝を抱えてしゃがみ込んだ
「夾架、教育に悪いよ流石に〜」
『あたしのせいじゃない!!尊が悪い!!///』
「イズモに絆創膏貰ってくる」
片手で顔を隠して、もう片方で尊を指さす
するとアンナの可愛らしい声が発せられたと共に、砂がジャシジャシと音を立てた
『や、ちょ、アンナ!違っ、あー…行っちゃった……』
その音に慌てて顔を上げると、アンナは草薙さんたちがいる方へと走っていってしまい、引き止められなかった
ケガじゃないのに……
そしてこれを隠すのには一体何十枚の絆創膏が必要なのだろうか
でも素直にこれはキスマークと歯型だ、だから大丈夫。だなんて言ったところで、キスマークってなに?なんで付けるの?なんて好奇心のままに聞かれてもなぁ
まだまだアンナには年相応で純粋なままでいて欲しい……
「キング、草薙さんの拳骨確定だね。ほら、とりあえず俺のパーカー着て?俺まで恥ずかしいよ流石に」
『尊のバカ…///』
「……十束わりぃ、部屋戻る。こいつも連れてく」
多々良が羽織っていたパーカーをわざわざ脱いであたしに差し出してくれたから、それを受け取ろうとしたけど、あたしよりも先に尊が受け取ってそれを多々良に突き返した
で、あたしが伸ばした腕を掴んで、浮遊感が訪れて、あっという間に尊の肩に担がれていた
へや、もどる……?あたしも、いっしょに……?
それ、あかんやつですよ絶対!
「ちょっ、キング?」
『待って待って待って、尊!えええ、多々良!助けて!!』
「ごめーん、俺には無理かも。夾架、陰ながら検討を祈っています。無事に帰還できるといいね。あ、2人の分のスイカは残しておくから安心してね〜」
スイカが食べれるか食べれないかは気にしてない!
もうこの夏に何回か食べたもん!
スイカはどうでもいいから本当に助けて
『尊!ちょっと!降ろして!まだ夜じゃない!!』
「暴れるな、気分は夜だ」
まだお日様が高いところでギラギラしてるんですけど
本当に破天荒にも程がある
『気分の問題じゃない!!ちょ、ほんとなんでいきなり!!』
「したくなった」
『どこにそんな要素あった!?』
「なんとなくだ」
なんとも言えない笑みを浮かべてサムズアップする多々良がどんどん遠ざかっていく
2人の会話って漫才みたいで面白いよね、って言われたこと思い出した
今も絶対そう思ってるよね、あとで八つ当たりしてやる〜…
それから夕方までちっとも解放してくれなくてご飯の時間になって、草薙さん(多々良はまた、俺じゃ止められないって言って草薙さんに押し付けたらしい)が、真っ最中な所を扉を熱烈なノックして、邪魔してくれて漸く終わり、アンナにいかがわしいもの見せた事と、今の今まで続いていた行為の事も、怒られて拳骨を食らってました
あ、もちろんあたしは怒られませんよ
だってちゃんと拒んでるし、拒んでも尊は聞いてくれないっていう不憫さもキチンと草薙さんは理解してくれてるので
尊は本当に傍若無人な王様ね
せっかく海にまで来たのにこれじゃあいつもと変わらない
季節感のへったくれもない人です
でもまあ尊らしいのかな
ちょっと悪気を感じて海にも入ってくれたし
なんとか夏を満喫できました?
END.