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□4.きみを1番理解してるつもりだったけど
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あの後、王子くんからの告白は丁重にお断りをした
こんな曖昧な気持ちのまま付き合っても、相手に悪い気がするし、傷つけたくない

そう言ったら、いつもの笑顔でわ分かった。と言って、ふられちゃったけど、これからもずっと夾架ちゃんが好きだから、いつか振り向かせてみせる。そう言われた

ほんとにいい人で
ごめんなさい。謝っても謝りきれないくらい、罪悪感にみまわれた


「夾架…こないだは悪かったな…」

『別に…あたしこそ怒鳴ったりしてごめん…』

猿比古から謝ってくるとは思わなかった
昼休み、適当に自分の席で食事をとり、端末をいじっていたら、いつの間にかあたしの目の前にいて、何故か謝っていて

その隣では頭の上にクエスチョンマークを浮かべた美咲

でももういいんだ

多分あたしは猿比古のこと、好きなんだと思う
でも、叶わない叶えちゃいけない恋なんだ

猿比古にはいつかきっといい人が見つかる
いや、もう彼女なんていらないかもしれない

猿比古と美咲は鎮目町で有名な集団、吠舞羅というところに入った

あたしはちょっとした関係から全て知ってしまった
王の話も、クランズマンとか、そういう話
2人は赤の王のクランズマンになったんだ

都市伝説に近いものなんだけど、伝説は真実

あたしとは随分違う世界に、遠くに行ってしまったんだ


『はあ…』

「夾架が溜め息とか珍しい」

『……なんでも、ない…』

「夾架、元気ないじゃん」

『なんでもないってば…』

なんでそんな心配そうな顔して、こういうときに話しかけてくるのさ

「猿比古、今日も行くよな?」

「ああ、草薙さんが今日話あるからって言ってた」

「そういやー言ってたな、なんの話だろーな!俺めっちゃ楽しみだぜ!!」

「うるさいDT」

あたしの知らない話
2人とはいつの間にか会話も減り、2人だけの世界があって、まるで別人のようになってしまった

2人はやりたい事と自分たちの居場所を見つけたんだ
あたしは何もすることがなくて、只々適当に1日を過ごして、前みたいに美咲とバカやることもなくなって、心にぽっかりと穴が空いてしまったみたい

この喪失感は剣を振る事じゃ埋められなくて、なんか虚しくて
もっともっと2人と一緒に居たかったのに
もう、2人にあたしはいらない

…そりゃそうか
2人は男、あたしは女
いい年だもん、男女の友情なんてたかがしれてる

あたしは2人の彼女でもなんでもない
ただの友達、友達以上恋人未満でもない普通の友達

きっと、これまでだ


『…あたし気分悪いから帰る、てきとーにごまかしといて』

「あ、ああ…いいけど、大丈夫か?」

『うん、帰って寝るから』

いきなり席を立ち、帰ると言いだしたあたしを見て美咲がおどおどとしだす
あたしの様子を窺いつつも、軽く手を振り、あたしの頼みを引き受けてくれた

まあ、この学校わりとゆるいから、勝手に帰ったところで何も言われないし
あたしにはだるくなったら帰る習性があるから、都合いいよね

「…チッ」

猿比古はあたしがサボる事に不満を抱いてる
舌打ちは、聞こえなかったことにしよう

あたしが帰ったところで、猿比古には何も関係ないのに
だから舌打ちする意味がわからない

『じゃあまた明日!』

ほんとは明日も休みたい
休んじゃおうかな、ははっ


猿比古の隣にはいつも美咲がいて
いつの間にかあたしは除け者
除け者ってのは言い方が悪いかもだけど、間違ってはない

昔はあたしが1番猿比古の近くにいて、わかってたつもりだけど、今は猿比古のことなんて知らない

猿比古には美咲がいる
猿比古の事を1番理解してるのは美咲

なんかあたし、汚い人間だ
 

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