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□8.きみを守るのも傷つけるのも他の誰かで
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(伏見視点)
ここ最近、無性にイライラする
夾架がセプター4にいるってわかって、久しぶりに会ったはずなのに、イライラしてそれどころじゃなかった
それぞれのクランズマンとしてじゃなくて、もう一度幼なじみとして会いたかった
卒業して会えなくなって、何故か異様に夾架と会いたくなって、やっぱりあいつが好きなんだってわかった
あの後夾架が気を失って、夾架の親に住所聞いて、連れてって、仕方なく着替えさせて、そこまでは別にいいんだけど
夾架の部屋のクリップボードに貼ってあった写真
よく見るセプター4の面々と写った夾架
楽しそうな写真ばっかの中で、《青の王》と2人で写った写真の多さが一際目立った
中にはいつものあの青い制服姿だけでなく、私服と思われる服装で、遊園地やら色んな場所で撮られてるのもある
なるほどな、そういう事か…
夾架は宗像礼司と付き合ってるんだ
つけてたネックレスも貰いもんか…
ムカつくイラつく
写真んの中の夾架は、俺の知らない夾架
全部自分のものにしたくなる
手に入らないものこそ、自分のものにしたくなるんだよな
はっ…俺も随分あいつに依存してるな…
らしくない、んなのとっくに知ってんだよ
「只今非常事態発生中です。指示に従って落ち着いて避難してください」
「…んだよこれ」
「どうする猿、俺たちも避難すっか?」
「しなくても平気だろ」
街で6名のストレインが暴れ始めた
すぐに駆けつけた青服共が一般人を避難させ始めたが、辺りはパニック状態になりつつある
どいつもこいつもきゃあきゃあわーわーうっせえんだよ
周辺の建造物やら看板は崩れ、ひっでえもんだ
修理費どんぐらいかかるんだろーなー
雑魚どもが応戦してればすぐに、上のもんが隊列つくってやってきた
青の王に、淡島だっけか、それと夾架
夾架が隊の前にでてるって事は、意外とお偉い立場なんだな
まああいつの剣の腕は相当だし、雑用とか好きそうだからな
“総員抜刀!!”
指示がかかればそれぞれが腰のサーベルを抜き、暴れるストレインの拘束にかかる
一見セプター4が圧してると思いきや、巧みな能力を使い連携も取れてるストレインの方が圧してるかもしれない
能力にやられ負傷する雑魚も多い。次々に戦線離脱していくセプター4の王、宗像礼司はさほど大きな動きを見せない
流石に街中でそんな能力は使えないって事か…
夾架だって、周りを庇うようにして戦ってる
これ以上怪我人を増やさぬよう、仕掛けてきた攻撃を庇って剣で受け、受け流して、思う様に戦えていない
んな雑魚、ほっとけばいいのに
雑魚ばかりが狙われ始めてる
そして夾架が余計に庇わなきゃいけなくなってる
これじゃいつ夾架がやられるかわかんねえ
周りの雑魚は何やってんだよ、夾架に迷惑かけてんじゃねえよ
「おい猿、手ぇ出すんじゃねえぞ。今おめえが考えてっことはわかっけどよ、後からめんどくせえし草薙さんにも怒られんだろ」
「チッ…わかってる…」
助けたいのは山々だ
でも今の俺じゃ助けらんねえ
くそっ、うぜえ、だりい
『っ、マズいな…圧されてる…!』
「士気を乱すな!剣をしっかり構えろ!九乃に遅れをとるな!!」
戦える人員が少なすぎる
これがセプター4の実力?弱すぎるだろ
「室長、このままじゃ…」
『せ、世理さっ…うっ!!!』
「九乃!!?」
夾架、やっぱりやりやがった
淡島が気を取られてるのを見計らったストレインが集中的に攻撃を仕掛け、それに1番に気づいた夾架が庇い怪我を負いながらも、ストレイン2名を捕らえた
右肩から胸にかけて衝撃波のようなもので深く切り裂かれ、左脇腹をナイフで刺された
『大、丈夫。とりあえず、こいつらを…』
「…あ、ああ。本当にすまない……」
『世理さん、が…戦えなく…なったら…みんなの…士気が下がる…。それにまだあたし、戦えるから…』
傷口から血が溢れで、痛みに顔をしかめつつ、おそらく異能を制御できる手錠をストレインかけ拘束する
くそっ、なんで能力使わなかったんだよ
使えば捕まえられなかったけど、怪我はしなかった
「…夾架、大丈夫ですか…?全くなんであんな無茶をしたんですか」
『…ごめ、なさい』
「私の大事な人を傷つけた代償は大きいですよ。それなりの覚悟はできている、という事でしょうか」
漸く青の王が動きだし、この騒動に片が付く
夾架はあの後、意識不明の重態となりすぐに病院に運ばれた
あいつがあんなになってるのに、俺は何もできなかった
あいつのあんな姿見せられ、たまったもんじゃねえ
傷つけたのはストレイン
守るのは宗像礼司
夾架に触れる全ての人が憎たらしい
なのに俺は、あいつに指1本さえ触れられない
俺なら傷ひとつつけさせず守れる
なんで俺は赤<こっち>にいるんだ
俺なら…夾架を守れる…
「俺を、セプター4にいれてくれ」
「ほう…第三王権者周防尊がクランズマン、伏見猿比古。随分と面白いことをいいますね
……いいでしょう」
これで、よかったんだ
後悔。そんなもの毛頭してない