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□1.俺のどこが可愛いんだよ
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『もう!八田ホント可愛い!』
「だー、もう!ホントお前うるさい!自分で何言ってんのか分かってんのかよ!ていうか、俺のどこが可愛いんだよ!」
先程から繰り返される言葉に八田は照れながら声を荒らげて否定をした
しかし火に油を注いだようで、夾架は更に燃え上がる
聞いたことには返事は返ってこず、再び可愛いと言われてしまう
『照れてる八田も可愛いー!』
「男が女に可愛いなんて言われて、嬉しいわけないだろ!?」
全く揺らぐことのない夾架は、説得するような八田の口振りをも変わらずに跳ね返した
『八田は可愛いよ』
「…全く、俺のどこが可愛いんだよ…」
そんな彼女を相手にして、もはや苦笑いをするしかなかった
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ことの始まりは昨日の事
その日、たまたま体調が優れなかった夾架は、2人の勧めにより午後の授業を保健室で寝て過ごした
放課後になり、八田と伏見は夾架のカバンを持って、保健室へと迎えにきた
その時、たまたま身長計が目につき、折角なので身長を測ろうという事になった
「……美咲ちっさ」
「…るせえよクソ猿。これから伸びんだよ」
「にしても、彼女より小さい彼氏ってどうなんだか…」
伏見はあまり乗り気ではなく、曰く興味が無いとの事だったので、メモリを読む係となった
測ってみると、夾架は165の、八田155の10cmの差という、八田にとっては屈辱的な結果となり、帰り際ずっと拗ねていた
その間も伏見に散々馬鹿にされ、夾架には可愛い可愛いと言われ続けた
その話は次の日になっても続き、今に至るのであった
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『昨日の八田、ホント可愛かった。あ、今も可愛いから心配しないでいいからね』
「そういう問題じゃねぇだろ。可愛いっつぅのは、女に使う言葉だろーがよぉ」
『やーね。あたしみたいなデカ女には、そんな言葉似合わないよ』
わりと冗談だけど、冗談じゃなく。
平均以上に高い身長を夾架は気にしていた
しかも彼氏よりも高いので尚更だ
可愛いなんて言葉は自分には似合わない。
そう言えば八田は、夾架の頭を優しく撫でた(下から)
指で頬を掻き目線を斜め上に逸らし、明らかに恥ずかしがった様子であったが、八田は夾架を素直に褒めた
「おめーは世界一可愛いよ」
『八田…///』
「うわー、美咲くさい…ひくわ…」
「るせえ!ほんとのこと言っただけだろ」
少し格好つけたかっただけ
しかし夾架のハートを射止めるのには十分であり、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった
これまた伏見に馬鹿にされたが、夾架が喜んでくれたので良かったと思う