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□2.このいちご牛乳はなんだ?
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「このいちご牛乳はなんだ?」
目の前に差し出された白とピンクの紙パック
目を数回瞬かせ、パックに書かれた"いちご牛乳"の文字を見て首を傾げた
夾架は右手で紙パックを八田に差し出し、左手を腰に当て、仁王立ちで鼻を高くしていた
そして自信満々に言うのだ
『八田にプレゼント!さっき猿くんと購買で買ってきましたー』
「おい、喧嘩売ってんのか」
『まっさかー。大好きな八田へ、夾架ちゃんの純粋な愛がこもりまくったプレゼントだよ』
えっへん。というら効果音を自らの声で付け加えて、手に持ついちご牛乳を更に八田へと押し付けるが、八田は一向に受け取ろうとしない
いちご牛乳を受け取らない八田を見て、夾架は口を尖らせた
その様子を後ろで見ていた伏見がちょっかいをかける
「これ飲んだら流石の美咲でも少しくらい伸びんだろ」
「うるせえな!こんなん飲まなくてもこれからぐんぐん伸びんだよ!俺よりほんの少しでかいからって…」
ほんの少しというのは間違いだろう
先日身長を測ったばかり夾架と10cmの差があり、伏見に至ってはもっと差がある
どこからその自信が来るのだろうか、いつも不思議に思っていた
2人は、もう望みは薄いだろうと、他人の背の成長を勝手に諦めていた
『八田可愛い』
「可愛くねえって言ってんだろ」
『いやいや、八田は可愛いよ』
「はぁ……」
ことある度にこうやって可愛いと褒めちぎられるが、本当に本当に、ちっとも嬉しくない
「ほら、さっさと飲めよ。
牛乳が飲めないって言うから、わざわざ、わざわざいちご牛乳を買ってきたんだからよお、美咲ィ…」
わざわざを2回強調してから、いつものサディスティックな笑みを浮かべた
なるほど発案は伏見か
購買に行った際になんとなく思いついて、夾架に提案でもしたのだほう
「馬鹿野郎、牛乳飲めねえのにいちご牛乳が飲めるわけねえだろ。いちごが入ってよーがなかろーが、牛乳には変わりねえよ」
『八田ならいける。
いちご牛乳って思わず、イチゴ・オレって思えばいいんだよ。はい、あーん』
いちご牛乳もイチゴ・オレも同じなのだが、牛乳と露骨な表現がされているかいないかの問題だ
いつの間にか紙パックにストローがさしてあって、万全の状態で、笑顔を浮かべた夾架がさしだす
伏見は明らかに企んでいるけど、夾架は明らかに純粋
企んでなどいない
伏見からの嫌がらせを受けるのは腑に落ちないが、
夾架の優しさを無駄にはしたくなかった
夾架から紙パックを受け取り、思い切っていちご牛乳をストローで口へと運ぶ
「…ふつーにうめぇな」
『でしょでしょでしょ!』
「……ちっ」
実は飲めました!
舌打ちも聞こえてきたが、それよりも夾架が喜んでくれたから良かった
牛乳を飲めば背は伸びる
を信じて、いちご牛乳を毎日飲むことを密かに決めた八田でした