long

□00
1ページ/1ページ



目を覚ますと必ず君は隣で眠ってる
朝の暖かな光が、カーテンの隙間から差し込み、小鳥の囀る声が聞こえる

なんて良い朝なんだろう

「んー…。夾架…おはよ…」

『おはよう多々良。今日もいい天気だね』

あたしが目を覚ますと、君もすぐに目を覚ます

「そうだねー…。お散歩日和かなあ」

『確かに。散歩とか日向ぼっこも悪くないね』

「決まり。今日は散歩に行こう」

他愛のないやりとりが好き
なんてことない会話なのに、あたしの心はこれだけで癒やされ落ち着く

昔のあたしじゃ、こんな生活考えもしなかった

全ては彼のおかげなんだ


かわりばんこで作る朝ご飯を食べて、支度して、いつもの場所に行く

「十束、夾架、おはよーさん。今日も元気やな」

「うん。夾架も俺も元気だよ。キングはまだ寝てる?」

「せや。尊はまだ寝てる。なんやあいつ、最近よう寝るからな」

鎮目町の一角にあるバー《HOMRA》
あたしたち吠舞羅の王権者属領であり、集会所のような溜まり場
バーのマスターの出雲さんの作る料理やカクテルとか、とっても美味しいんだよね

「誰が寝てんだよ」

「いだっ…ちょちょちょ!!キング!痛いって…!」

『あ、おはよう尊!』

バーの2階に住み着く尊、今日はいつもより起きるのが早いのでなにより
いつも通りの仏頂面で、ああ。とだけ答えると、いつも通りどかっとでかい態度でソファーにふんぞり返る
まあ王様だからでかい態度も似合うのよね

多々良の頭を尊の手ががっちりホールドし、力を加える
さすがのキングさんでも、頭蓋骨折っちゃうようなヘマはしないってわかってるけど、見てらんないなぁ


朝から元気な2人を尻目で見てると、後ろからパタパタと控えめな足音が聞こえてきて、あたしの後ろでピタッと止まる

それからツンッとあたしの服の裾が、軽く引っ張られる

「キョウカ…おはよう…」

『おはようアンナ。よく寝れた?』

アンナ。あたしと同じくストレインの少女
互いに異能を持つもの同士。女同士。色々あったけど、上手くやってるとは思うかな

私の問いにコクコクと頷くアンナは、なんて可愛らしいんだろう

「アンナも尊も腹減ってるやろ。今何か作るからまっとってな」

「キョウカ…髪…やってほしい…ダメ…?」

『全然いいよ。じゃあもっかい洗面所行こっか』


向かう先は洗面所。奥には浴室。
尊が使ってるわりには綺麗に整頓されてると思う…あ、失礼すぎたかな?

『アンナの髪は凄く綺麗だね。サラサラで羨ましいしいなー…』

絹のように柔らかで、素晴らしく櫛通りのいい髪を、ブラシで整えていく
あたしもこんな風にサラサラストレートになりたい
矯正かけようかなー。それかいっそバッサリショートにでも…

「キョウカも…きれい…」

「俺もそう思いまーす。ショートにしちゃうの勿体ないし、矯正かけたら痛むし、継続してかけないとだからめんどくさいよ?」

『ありがとアンナ。…ってなんで多々良がここに!下にいなかったっけ?』

アンナにヘッドセットの帽子をつけてあげると、何かちょっと幻聴が聞こえてきたと思ったけど、鏡に多々良が映ってる
さっきまで尊とじゃれあってたのに、どうしたんだか

「夾架は今のままでも充分可愛いから大丈夫!!」

『…話聞いてました?』

「んー、聞いてなーい」

『ばかっ…何す…!///』

しまった。アンナの目隠す時間すらないまま、してやられた

いきなり顔を多々良の方に向けさせられたかと思いきや、既に多々良の顔が目の前にあって、唇と唇がくっついてた

『ちょっと、アンナの前でこういう事禁止!!』

「って…唇拭うとか、酷くないかな?」

そういってる間にも、また唇を重ねてくる
そんな拭っちゃダメだったかな
冗談のつもりだったんだけど

でも、アンナの前はホントだめなんだってば!!
ほら、現に鏡ごしに凝視して、見てるじゃない

『わかったから!はいはいごめんなさい!!//』

「…ラブラブ…いいな…」

『アンナ、今見た事は忘れようね。アンナは何も見てない、うん、見てない見てない!』

ホント多々良のバカ…

「俺バカじゃないよ?まあ夾架よりはバカだけど、一応勉強できるよ?」

ああもう心読むなバカー!!

「しょうがないよ、俺たち繋がってるんだし??」

『でもあたしはそんなに多々良の心読めないし』

「なんでだろうねえ?」


あたしと多々良は心というか意識というとか、リンクをし、干渉し、繋がりあっている
あたしがストレインである以上、多々良と繋がってないといけない
そうじゃないと、あたしは…

「へーきへーき。何とかなるって」

『そうだね、ある程度距離が離れてても繋がってられるらしいしね』

「平気。キョウカの能力、安定してる」

多分アンナには見えてる、あたしの能力のことも
感応能力を持つアンナが言うなら、きっと大丈夫だと思う


「夾架さんたち降りてくるの遅いっすよー」

『美咲、猿比古、来てたんだ』

3人で下に降りれば、美咲と猿比古も来ていた
ぞくぞくと此処にみんな集まってきて、賑やかさも増して、朝晩の静けさが嘘みたいに思える

「確かにえらい遅かったな。上がってった十束も戻ってきいひんし、何しとったん?」

「…ラブラブ」

『きゃああ!//言わなくていいってば!!///』

出来上がったばかりのオムライス
尊はすでに黙々と食べ始めていて、アンナもパクパクと食べ始める

「否定しないところがまたアレですね」

『猿比古まで、そういうのいいから!//』

「朝からナニやってんすか十束さーん」

「ナニもしてないよ、八田〜」

「…いっぱいちゅうしてた…」

「あだっ…ちょ、ぶたないでよキング〜…」

もはや苦笑いしか出来ないです
男の子はみんな朝から元気いっぱいすぎて困っちゃう

こんな男ばっかの、不良の溜まり場かと思いきや、みんな優しくて、良い人ばっかりなんだよね

毎日毎日、みんなでくだらない事やって、バカ騒ぎして、大笑いして

あたしは、この場所にみんながいて、あたしもこの場所にいて、それだけでいい、他には何もいらない
生きる楽しさを教えてくれた、大事な大事な場所



あたしの人生は
あの時180°変わったんだ
 
 
 
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ