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「ただいま草薙さん!大変なんだよ!」

「なんや十束、その女の子は。犬やら猫やらまだしも、人拾ってくるとは流石に思わんかったわ」

「とりあえずタオルと救急箱!話はそれから!!」

「せ、せやな。ちょっと待っとき」

草薙は慌ただしく開いた扉を見て、随分遅かったなと思いながら、布巾で拭いていたグラスを置き十束を出迎えに行く
すると、買ってきてもらった荷物の他に、肩に担ぐずぶ濡れで血塗れた女を見て、すぐにワケありだと勘づく

草薙がタオルなどを取りに、急いで二階に上がって行き、その間に十束は夾架をソファーに寝かせた
寝てしまったのか。そう思いそっと頭を撫でると閉ざされていた瞳がゆっくりと開かれた
起こしてしまい、少し申し訳なさを感じながらも十束は頭を撫で続けた

「大丈夫?」

『…えっと、ここは…どこ…?』

「ここはバーHOMRA。マスターとは知り合いでさ、あ、若くて優しいイケメンだから安心して」

『ほむ…ら…?』

「そう、吠舞羅。バーだけどカレーとかも美味しいよ」

夾架はまだ少し虚ろな瞳で店内を見渡し、オシャレな店だな。と思い、十束曰くの若いマスターってどんな人なんだろうか、おじさんに近い感じなのかな。なんて勝手に想像していた

「ああ、起きたんか。具合はどや?まあ、いいようには見えへんけどな」

『あ、えと…突然ごめんなさい…。迷惑だったらすぐ出て行きます…』

「あ、ちょっ、夾架ちゃん!?どこ行くの!?」

やっぱり何の関係もない人を巻き込んでしまうのには罪悪感を感じ、見るからに人の良さそうなマスターを見て、ダメだと悟った

店から出て行こうと思い、ソファーから立ち上がった途端にくらりと眩暈がし、目の前が真っ暗になった
倒れそうになったところを草薙がしっかりと受け止める

全くと言っていいほど思考が巡らず、今の状況を飲み込めていない夾架
何があったのか気づいた瞬間、やってしまったと更なる罪悪感を感じた

しょっぱなから迷惑をかけてしまい、尚更出て行きたくなった

「じっとしとき。たぶん貧血起こしとるんや。誰も迷惑だなんておもてへん、安心せえや」

『…ごめん…なさい…』

「夾架ちゃんはストレインなんだ。逃げ出してきて、追われてるらしくて、結構怪我してたから連れてきたんだ」

「なんやストレインなんか。追われてるんなら、ここにいるんが1番やな」

「やっぱ、草薙さんもそう思うよね」

再び夾架をソファーに座らせて、タオルを渡してやり、十束もコートを脱いで自分の身体を拭く

やっぱり連れてきてよかったと改めて思うのは、十束が昔の事を思い出したからだ
無意識に夾架を昔の自分と重ねていて、公園で出会った時から、放っておけないと思い、少し胸が苦しかった

「自分、夾架っていうんか。ええ名前やな。俺は草薙出雲、ここのバーのマスターやってます」

『九乃夾架です。ストレイン…なんですけど、特殊なストレインで…ずっと施設に拘束されてて、今朝逃げ出してきたんです…。追われてて…途中で十束さんに、助けてもらいました……』

「大変やったんやな。もう安心してええよ。夾架ちゃんの安全は俺らが保証したる」

少しでも夾架に安心して欲しくて、草薙は優しい笑みを浮かべる
夾架は十束、草薙を、本当に優しいんだ。とは思うものの、何故ストレインの存在を知っているのかがどうしても気になる
彼は一体何者なんだろう。とひたすらに思考を巡らせるが、拙い知識の中から答えは出なかった
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