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無事にテストも終了し、八田と伏見の2人には其れ相応の力と、左の鎖骨のところに徴を与えられた

八田は、鎌本と昔ながらの知り合いであったこともあり、すぐに吠舞羅へと馴染んでいった
伏見はというと、独特な雰囲気を持っており、人を寄せ付けないオーラを醸し出している
そんな伏見を、夾架は何故か目で追い、放っておけなくなった

新人の面倒を見るのはいつも通り十束
八田は鎌本のこともあってすぐに馴染んだので、自然に任せていたが、伏見はまた別だった
人を寄せ付けないオーラが濃いため、あの十束ですら手を焼いていた

皆は伏見に苦手意識を持っていた
周防、草薙、十束、夾架、八田、鎌本の6人はそんなことなかったが、その他のメンバーは、余り好ましいとは思っていなかった

だが最近証明された
入りたてだが、伏見の実力は相当で、下手に逆らえない。と

吠舞羅は割と実力主義であるので、強い者はどんどん上へと上がって行く
なので誰も伏見には何も言えないし、もしも言う気があったとしても、伏見は自ら避けるだろう

八田は絡みやすい。だが伏見は正反対
どちらが苦手かと聞くと、皆口を揃えて伏見と答えるだろう

だが夾架はそうではなかった
夾架的にはどちらかというと、八田が苦手だった

八田は女が苦手である
何故かはわからないが、とりあえず苦手らしい

吠舞羅でたった1人の女、夾架のことももちろんダメ

とても避けられているのはすぐに分かった
話しかけられても顔を真っ赤にして、どもって、鎌本らに助け船をだす

女が苦手なのは分かっているが、そこまで露骨に避けられると夾架も凹むし、嫌われているのだと思ってしまう
実際嫌われていると思い込んでいる
八田自身、吠舞羅での楽しさ、生きる楽しさを教えてくれた恩人である夾架にとても感謝している
そして、女でありながらも強さとカリスマ性を兼ね備える夾架を、周防と同じ様に尊敬していた

しかし、それとこれとは話が別だった
夾架の容姿や性格、言動全てが、八田の苦手の分類の中の最高ランクに位置していた
要は夾架が可愛すぎるが故に、見てると照れて、恥ずかしくて仕方ないのだ

それに比べて伏見は、癖が強いけれど、露骨に避けられているわけではない

十束が玉砕した後、夾架がトライしてみたら、案外上手くいったのだ
話しかければ、少しめんどくさそうにだが、しっかり受け答えしてくれる

それから、やはり伏見のことが気になっていた

軽く心を閉ざしかけている伏見が、昔の自分と少しだけ似ていた
それがもっと加速する前に、夾架はなんとかしたかった
いつかきっと伏見も、自分の様に壊れてしまうのではないか
折角仲間になったのだから、頼って欲しい
伏見の心の奥底のことはよく分からない
八田みたく、簡単に入り込めそうではない

よく分からないのだけど、なるべくは、分かってあげたかった

何故伏見が夾架に少しだけ心を開いたのは、伏見自身もよく分かっていない
何故なのかは分からない、分かりたいけど分からない

八田みたく、特に吠舞羅を気に入っているわけではないが、夾架にと話していて退屈しなくて、悪くない。と思った

少しだけ感謝をしていた。だから、夾架をつっぱねたくなかった
ただ、それだけ

八田と伏見は正反対な性格ではあるが、それなりに仲が良く、平日、学校が終わり放課後になれば、必ずバーに2人揃って来るのだ
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