小さなカケラ
□アリガトウ
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「消えるって…どういうことだよ!」
白い壁で囲まれた研究室に悲痛な叫び声が木霊する
涙を浮かべた表情ですがり付き説明を求めるマスターに僕は笑顔を浮かべる事しか出来ない
僕は人間達の身勝手な目的の為に作られた機械。目的を終え必要無くなればすぐに処分される
そんな事は初めから分かりきっていたこと。そしてそれが今というわけだ
処分される事を僕が伝えるまで知らなかったマスターは、なんとか出来ないかと必死に考えてくれている。
マスターには本当なら伝えないままの予定だったが、できることなら別れを伝えたく話すことを決めた
監視兼観察として側に居たマスター
僕を道具や機械ではなく仲間と言ってくれた初めての人間
本当ならもう少しでいいからマスターと一緒に居たかった
「何時までメソメソ泣いてんですか。平凡な顔が更に残念になりますよ」
普段の落ち着き払った表情は何処にいったのか僕の目の前には顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き続けるマスター
何時もと違う表情に僕はプログラムされている笑みを少しだけ深くする
「お前っ…消えるんだぞ!?なんで……なんでそんなに笑ってられるんだよ」
「なんでって別に怖くなんか無いですから」
事実消えることに初めから恐れなんか無い
機械である僕にそんな質問をするのもマスターだけだ
「それに僕ですよ!またすぐに戻ってきますよ」
……これは嘘
もうマスターには会えない
僕は完全に消えて無くなってしまう
この体もすぐに壊される
――だから
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