小さなカケラ

□攻防戦
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「着ろお前の為にあしらえた」


「絶対断る」


一時間程前から俺と恋人である影騎の間で繰り広げられている攻防戦

影騎が着ろと押し付けてくるのは、女の子が着たら最高に可愛いだろう裾にフリルが贅沢にあしらわれ後ろには大きなリボンが付いた水色のワンピース。おまけにガーター迄付いている

特注らしいが影騎の趣味か?

影騎は中身俺様だが顔はイケメンだからお願いされたら女子なら喜んで着るだろう。だが俺は男だ!平凡な顔の俺が女装しても気持ち悪いだけで罰ゲーム以外のなにものでもない


何より男のプライドが絶対に許さない!!


影騎とは付き合って2年になるが、初めて出会った頃から影騎は少しでも興味を示したものには納得するまで突き進んでいた


その犠牲の殆どは俺なのだがな………


前は突然「俺に壁ドンしてみろ」なんて命令してきて、仁王立ちの影騎に必死に壁ドンさせられたな
俺の方が圧倒的に身長低いから苦労しながら何度も角度を変えて試し最終的に影騎が座ってやっとマトモな壁ドンが出来た過去は記憶から消し去りたい

が、全然マシだったと今なら言える!女装する位なら身長差を見せ付けられる方がまだ……まだマシだ!!

影騎に背を向け絶対に着ないとアピール。全くいい加減諦めてくれ


「……分かった」


数分程お互い無言のままいると後ろから影騎のため息混じりの声が聞こえた。やっと諦めたかコイツ


「ようやぐにゃ!?」


安心した俺は振り返ろうと体を動かすと、上から服の襟を強く引っ張られ子猫をくわえ移動する母猫のように影騎に首根っこを捕まれたまま部屋の外まで連れ出される


「おまっ!何すんだよ!!」


「俺が許可するまで一歩も動くな待ってろ」


俺の抗議など一切聞いていない影騎は一方的に命令だけすると俺を廊下に放置したまま部屋の扉を閉める
念の為なのかガチャりと鍵を閉める音まで聞こえたぞ


「あったまきた!これ以上付き合えるか帰る!!」


「帰ったら………一生俺の部屋から出られないと思え」


頭にきた俺はさっさと帰ろうと玄関まで歩きかけたが、扉越しからでも分かる威圧感と冗談に聞こえない言葉に大人しく廊下に正座する


恋人としての勘と経験から分かる。影騎なら必ずやる


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