長門有希の本

□聖夜
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季節は冬。今年は雪も少なく割りとすごしやすい冬だ。
今日は冬休みにも関らず学校に来ている、

「メリークリスマース!」

高らかに掲げたジュースと意気揚々としたハルヒの声が部室に広がった。

「ったく・・別に部室でやるこたぁないだろうに・・」

ハルヒに聞こえない様に小声で呟いた

「こんなクリスマスもたまにはいいんじゃないですか?」

相変わらずニコニコした顔で古泉はジュースを差し出した。

「まぁな、一年に一回だからな・・」

ジュースを受け取り口に含む。

「コラー、キョン!何暗い顔してんのよ!楽しみなさい!」

「お前がテンション高すぎなんだよ。俺は普通だ。」

もう一度、ジュースを口に含む

「ったく・・もういいわ。あ、そうだ!みくるちゃん、サンタの衣装持って来たんだけど・・」

「ひえっ!?」

ハルヒは有無を言わさず朝比奈さんの服に手を掛けた。

俺と古泉は暗黙の了解で部屋を出る。

「寒いな・・」

「寒いですね。」

深々と降り積もる雪を男二人で眺める・・何とも悲しい光景だ。


それから暫く、寒い廊下で待ちハルヒの許可を得て部屋に戻り、宴もたけなわになった頃、
ハルヒを無言で部屋を出て行き、古泉、朝比奈さん、長門はお互いの顔を見合いなにやら企んでいるようにも見えた。

「では、僕はそろそろ。」

「古泉、帰るのか?」

「ええ、仕事がありますので・・あぁ・・(閉鎖空間とか涼宮さん関係ではありませんから、ご安心を。)」

最後の方は顔を近づけ吐息のかかる距離で話された

「どうでもいいが・・顔が近い!」

「おっと、失礼。では。」

そのまま古泉は部室を後にした。

「あ、あのぉ・・私もそろそろ・・」

「え?朝比奈さんも?」

「はい・・ちょっと用事が・・」

そう言うとそそくさと部屋を出て行き部室には静寂が漂った。

ガタ・・

「・・・・帰る。」

座っていたパイプイスを少しずらし本を片手に長門も部屋を出て行き、部屋にはパーティの残骸と食べ残し飲み残し、そして俺。

「何なんだよ・・・。」

ぶつくさ言いながらその残骸を片し始めた。

「そう言えば・・ハルヒの奴ドコに行ったんだ?」

帰るにしても荷物が残ってるし・・トイレ、にしちゃ長すぎる。
ハルヒが戻らないまま部屋の片付けは大体終わった。

「ふぅ・・」

窓を開け冷たい空気を部屋に入れる。

「まだ、降ってるなぁ・・雪・・。」

未だ止まない雪を見上げ白い吐息が空へと消えて行く・・。

ガチャ・・

部屋のドアが開く音がした、きっとハルヒだろう。

「遅かったなハル・・ヒ・・?」

帰ってきたハルヒを見て驚いた・・

「・・・・何よ・・。」

もうハルヒの行動全て体験し尽した気でいたが・・まだあったみたいだ・・

「待て、何でサンタなんだ?」

「クリスマスだからよ。」

赤いミニスカなサンタ、街中のいかがわしい店の勧誘かと思う程の丈の短さだ、

「みんなは・・?」

「帰った。みんな用事があるんだとさ、」

「そう、」と言ったきりハルヒは喋らず、自分のスカートの裾を握り締め顔を赤くしていた・・

「ハルヒ・・お前・・もしかして、恥ずかしいのか?」

「あ、当たり前でしょ!?こんな丈の短い服・・」

バニーガールやチアガールは公衆の面前で出来るのに、サンタは恥ずかしいのか。コイツは・・

「そりゃ、そうか。でも、残念だな、皆が帰った後でさ?」

「・・・・に・・たかったのよ・・」

何か小さくハルヒは呟いていた。

「あ?何だ?」

「アンタに見せたかったのよ!この服。」

服も顔も赤くしてハルヒは叫んだ。その言葉が、「俺に見せたかった」?

「お、俺に・・?」

「クリスマスプレゼント・・その・・男が欲しい物なんてわからないから・・古泉くんに聞いたのよ・・そしたら・・」

『男の人が欲しい物ですか?そうですねぇ、あの人なら・・涼宮さん自身をプレゼント、と言うのは如何でしょう?』

「って・・」

あの野郎・・何大変な事言ってんだよ・・。

「だから、わ、私がプレゼント・・」

ハルヒは俺の元に歩み寄り、そっと手を握る・・

「ハルヒ・・」

「私じゃ・・ダメ?」

そう言ったハルヒは・・初めて見る表情で、不覚にも心奪われてしまった・・

「ダメじゃないが・・お前は俺でいいのか?」

「キョンじゃないと・・ダメなの・・」

「そうか・・じゃあ、プレゼント返さなきゃな、何がいい?」

ハルヒは少し考え、とった行動は・・

「っぶ・・」

背伸びをして、俺の唇を奪いやがった・・

「これでいいわ。お返し。」

「お前!断りも無しに・・」

ハルヒとのやり取りに夢中で気づかなかったが・・
部屋のドアに10円玉ぐらいの穴が開いているのに気づいた。

「まさか・・っ!」

慌ててドアを開くと案の定ビデオカメラがポツンと立っている。そこから伸びるコードを目で辿ればコンピ研に伸びている。

「バレましたかー。」

コンピ研のドアが開き笑顔の古泉と無表情の長門、顔を限界まで赤くした朝比奈さんが出てきた。

「お前ら・・何して・・」

「見ての通り撮影です。涼宮さんの企画でね・・」

「ハルヒの・・?」

じゃあ、いままでのは・・全部演技?

ガクンと身体の力が抜け、廊下に尻餅をつく・・

「ちなみにあなたがたの一部始終は全部モニタリングしてましたから、あしからず。」

「はははは・・そうだよな、ハルヒが俺なんかになぁ・・」

反面残念、反面ガッカリな気持ちだ・・

「ちなみに、半分は本気みたいですよ?」

いつの間にか間合いを詰めていた古泉が耳打ちした。

「半分?って顔が近い!」


「涼宮さん、本当に僕に聞いてきたんですよ?顔を赤らめてキョンが何が欲しいか分かる?って」

「ハルヒ・・」

俺はせっかくのハルヒのプレゼント、ミニスカサンタ姿を目に焼き付けよう・・そう思いしばらくハルヒだけを見ていた・・。

「ハルヒ・・ありがとな・・。」


END

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