*お日さま園出身の少女の話*

□-バレンタイン2013*No.5-
1ページ/1ページ









電車が駅に差し掛かり扉が開いた瞬間走り出す





危ない事は重々承知しているが今回だけは見逃して戴きたい





冷たい風を切るようにして走り少年と少女は学び舎へと駆け込んだ








□■□■□■□■□■□■








「「すみません!遅くなりました!!」」






勢いよく部室の扉を開き2人同時に口を開く。
いきなり開いたドアと2人分の叫び声に驚いた皆の視線が降り注ぐ。
少しの沈黙。そしてそれを破ったのは拓人だった。





「2人ともそんなに焦って・・・。まぁギリギリセーフってとこだな。」





くすくすと笑いながら拓人が言う。
時計に目を向けてみれば部活開始3分前。
ホントにギリギだなーなんて・・・。





「というか、紫音はなんで私服なんだ?」





蘭丸が拓人と同じ用に笑いながら問いかける。
そう言えば私、私服だった・・・。今まで何とも思わなかったのに自覚した途端恥ずかしさが込み上げて来た。
わたわたして言葉にならない私にマサキがジャージを手にしながら近づいてきた。





「まぁ、紫音さんも色々あるんですって・・・。はい。ジャージ。」





マサキの説明に蘭丸は"ふーん"と返事を返した。
私はマサキにお礼を述べジャージを受け取り着替えるためにマネージャーの控室へと向かった。








□■□■□■□■□■□■








部活はいつもと何ら変わらず終わり皆片付けを始めた。
マネージャーは皆バレンタインのプレゼントを用意していたので、部員の皆には着替えたら待ってて貰うように話してあった。
控室に戻りそれぞれプレゼントを手に持ち部員の皆がいるところへと向かった。





水鳥ちゃんはお菓子作りがあんまり得意じゃないみたいで茜ちゃんと合同で作ったらしい。
葵ちゃんは時間がなかったから既製品を買っちゃったと笑っていた。





皆各々部員にチョコを渡していく。
私は結局星型のチョコレートだけじゃ物足りない気がしたのでチョコチップクッキーも追加した。





皆それぞれお礼を言いながら受け取ってくれたりその場で食べて味の感想を言ってくれたりと反応は様々だったけど喜んでくれたみたい。
皆に配りながらも拓人と蘭丸、それにマサキにはこの後少しでいいので残ってもらっていいかと断りを入れるのを忘れなかった。








□■□■□■□■□■□■








プレゼントを渡し終わった水鳥ちゃんは恥ずかしいから茜ちゃんを連れさっさと帰ってしまった。
それを見た皆もしばらく微笑ましいななんて笑っていたが次第に荷物を纏め始め、それぞれの帰路に付き始めた。





部室内は私と拓人と蘭丸、それとマサキだけになった。
流石に皆の前で渡すのは恥ずかしかったし皆の分まで用意していなかったので3人が残ってくれてよかったと思いつつ鞄を漁りそれぞれへのプレゼントを取りだす。





「はい♪3人には特別にこれも用意してみました。」





3人ともポカーンとしていた。
まだプレゼントを用意していたという事に驚いたみたいだった。
私はポカーンとしている3人の手の上にそれぞれプレゼントを乗せていった。





拓人と蘭丸にはガトーショコラにペチュニアの花を添えて。
マサキには拓人や安丸と同じガトーショコラにムスカリの花を添えて手渡す。





拓人は未だにポカーンとしながらもお礼を述べて受け取った。
蘭丸は笑顔で"ありがとな紫音"と言いながら満面の笑みを浮かべる。
なんでこの幼馴染2人はこんなに可愛いのだろう、と思ったが口にはしなかった。
きっとそんな事を言ったら拓人は落ち込むし蘭丸は拗ねるかなーなんて思って。





マサキに至っては未だに混乱しているらしく"・・・ホントに俺も貰っちゃっていいんですか?"なんて苦笑いしている。
勿論と言い渡せば少し照れたような笑顔を見せ"・・・ありがとうございます"なんてぼそりとつぶやいた。





3人ともプレゼントを気に入ってくれたみたいで拓人と蘭丸は幸せそうな顔をしながら再度お礼を述べた。
マサキも未だにそっぽ向いてるので、あれ、ガトーショコラ嫌いだっけ?なんて思ったがふと目に入ったマサキの耳が赤くなってるのできっと照れてるだけだなと思い嬉しくなった。





そんな3人を見ていると私まで幸せに包まれているような気分になった。
皆にもこの幸せが少しでも伝わるといいな・・・なーんちゃって・・・。








□■□■□■□■□■□■







*なんか俺らだけ追加で貰っちゃって部員の皆には少し申し訳ないな



*まぁ俺らだけ得したって思えばいいじゃんか♪神童は深く考えすぎだって



*俺、お日さま園でもケーキ頂いちゃったんですけど・・・



*マサキは今日全部食べちゃ駄目だからね!



*はいはい。分かってますよ紫音姉様。







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ