とりこ

□バカは風邪をひかない:鉄平
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「…鉄兄?」



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今回の仕事は疲れた。
半端なく疲れた。


今回俺が受け持った依頼はもともと師匠のもので、本来なら俺は休みだった…のに!
時間をさかのぼること27時間前…。


師匠が依頼当日になって俺に依頼を押し付けてきた。
ホント勘弁してほしいよ…。


徹夜明けの弟子にさらに徹夜するような仕事押し付けるなんて鬼でしょ?
しかも、「やっとかなかったら今後の休みは当分ないと思え!」なんて脅しかけてくんだもんなー。


師匠は言ったことは実行する。


イコール、やらなかったら一か月はこき使われるのが目に見えたわけで…。
徹夜明けの怠い体に鞭を打ち、それからまたその日も徹夜して今日の昼前くらいにようやく師匠に押し付けられた仕事が終わった。


食事もとっていなかったらからとてつもなくお腹が空いていたが、睡魔に襲われて俺は研究室のソファーでそのまま寝てしまった。




「これは…爆睡してるのかな…?」




夢の世界にいざなっている俺に声をかけるのは妹のミズキ。
妹って言っても血がつながってるわけでもジジイの養子ってわけでもない。
齢が10離れてるから、なんだか兄妹みたいでそう呼んでるだけ。


…もっとも、俺は妹だなんて思ってないけどね。




「ホントにもう…。鉄兄ー、起きて。寝るならベッド行きなよー?」



「…ん…?」




ぺしぺしと崩れたリーゼントを叩かれ、すこし夢から醒める。




「なに…ミズキ」




焦点の定まらない目でミズキを見上げれば、「寝るならベッド行かないと風邪ひくよ」なんて言葉が降ってくる。
正直、今は風邪でもなんでも引いていいからすぐにまた夢の世界へお邪魔したい。
つまり眠い、果てしなく。




「…寝る」



ミズキの言葉をスルーして再び自分の腕に顔をうずめると、今度はチョップが降ってきた。
軽くだから痛くないけど、意識をはっきりさせるには十分だ。
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