うたぷり
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「いいですか? 少しでも気分が悪くなったり、変な人に声を掛けられたら連絡するのですよ?
あと、人と2人っきりになるのは避けること。
一人部屋だからと言って部屋に知らない人を上げないこと。
もちろん知っている人でも二人っきりになるのはいけません。 それから―…」
「トキ兄、大丈夫だって。 僕はもう10の子供じゃないんだから」
僕は一ノ瀬トキヤの弟、一ノ瀬水月。
生まれつき少し体が弱く、よく発作を起こしたりしていたけど、ここ数年はそれも減ってきた。
そんな僕は明日から早乙女学園の作曲科に通うことになってる。
ちなみに、既にプロとしてシャイニー(シャイニング早乙女)の事務所で働かせてもらっていて、この学園に入ったのは他でもない早乙女さんの指令みたいなもの。
シャイニー曰く、この学園へ生徒として入り、作曲・アイドル共に見込んだ者を探し、その子をスカウトしろとのことで、トキ兄には「初心に戻ってもう一度勉強したいから」と言ってあるから、当然僕がそんなことを言われているなんて知らない。
「しかし…」
僕がこの学園に編入すると聞いて、トキ兄は真っ先に僕の部屋へやってきて、なぜ相談してくれなかったのかと少し怒られたりしたが、結局は優しいトキ兄。
僕のことを許してくれて、昨日は部屋の片づけを手伝ってくれ、そのままここに泊まったのだ。
(僕は皆が2DKをペアで使っているが、シャイニーが本来の目的であるスカウトすることに支障が出たら困るからと配慮してくれたのか、2DKを一人で使っているので、全然問題なかった)
ちなみに、クラスは今日の夜シャイニーから電話で伝えられることになってるからまだ知らない。
けど、この学園で僕が知っているのはトキ兄とその同室者である一十木音也くん(僕は音くんって呼んでる)だけだから、誰も知らないクラスに入るのは何となく嫌なので、シャイニーにSクラスかAクラスがいいと昨日告げてきた。
(しかし、もともと僕の実力的にそうするつもりだったらしい)
それはさておき、トキ兄は今朝は待ち合わせにしようと音くんに提案されており、(音くん曰くトキ兄と学校へ行くことが日課になっているから一緒に行きたいとのこと)本当はもう少し余裕があるところだが、そろそろ部屋を出る時間になっていた。