うたぷり
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「みーつきー」
「あれ、音くん?」
編入一日目の夜。
仕事もなく、特にすることもなかった僕がそろそろ寝ようかな、と思い始めていた頃。
部屋のベルが鳴り、誰だろう?と扉を開けると、そこにいたのは枕を持った音くんだった。
「どうしたの? 枕なんて持って」
普通、枕なんて持ち歩かないよね?なんて思いながら音くんに尋ねると、「うん、あのね? …今日、一緒に寝てもいい?」なんて予想外の返事が返ってきた。
「へ? 僕は別にかまわないけど…。なんかあったの?」
不思議に思って聞くと、音くんは「別になにもないんだけど、何となく。 …ダメかなぁ?」と少しシュンとしながら言う。
何だろう、犬耳(しかもたれてる)が見えるのは気のせいだろうか。
とにかく、中に入って。と言おうとしたその時。
誰かが音くんの手をつかみ、音くんは玄関先で止まった。