うたぷり
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「そういえば、水月呼び出されてたけど、何の話だったの?」
昼食後、僕らはSクラスで屯していた。
「作曲のお話。 ほら、僕皆より二ヶ月遅れて入ったから、入学早々のレコーディングテ
ストやってないでしょ? だから、その評価が抜けちゃってるから一曲作ってこいって」
ホントは違うんだけど…、まぁ大丈夫でしょ。
とりあえず仕事のことはまだ言えないし、ごまかすために入学のときにするレコーディングテストの話を持ち出す。
皆はこの言い訳に納得してくれたけど、トキ兄だけには分かってしまったらしく、口パクで「無理をしないように」と言われてしまった。
トキ兄にはかなわないなぁ…。
「僕、みーちゃんの曲聞いてみたいですぅ〜!」
「ああ、確かに早乙女校長が認めた腕前だからな、俺も興味がある」
「俺も俺もー! 水月の曲聞いてみてぇ!!」
しばらくなんもない会話をしていると、なっちゃんが唐突に僕の曲が聞きたいと言い出した。
真斗や翔もなっちゃんの意見に反応し、ほかの皆も興味ありげに頷いている。
「んー…、じゃあ、皆を見たときに浮かんだ曲でも…。 まだ作りかけだけど」
「へぇ? 子猫ちゃんが俺たちを見て、ねぇ」
「俺、すっげー興味ある!! 水月ちゃんの曲って、どれも俺大好きだもん!」
レンは俺を見て嬉しそうに笑い、音くんはひまわりを散らせるような笑みを浮かべている。
そんなに期待されても…まだ未完成なんだけどな。
そう思いながら教室の後ろに備え付けられているピアノへ移動し、モノクロの鍵盤を皆と会った時のことを思い返しながら打つ。
奏でられた音は教室中に響き渡り、僕はみんなの注目の的となった。
けれど、それも気にならないほど僕は曲に集中し、音を紡ぎ続ける。
おそらく4分ほどだろうか?
僕がそっと手を鍵盤から離すと、教室中から拍手が上がった。