うたぷり

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「子猫ちゃん、明日からなんだけど…」



「防犯カメラ、でしょ?」



「そ。 机の中・下駄箱の中の上・子猫ちゃんの部屋のドアを少し改造して、のぞき穴に仕掛けることにした。 前もそうだったけど、今日手紙が入っていたのがこの三か所だったからね」





僕はレン達の部屋に着くなり、カメラの事と、ICレコーダーの使い方を教わった。
下駄箱の中に手紙を入れるときは位置関係的におそらく顔が映るから、明日下駄箱に入っていればおそらく映るだろうとのこと。
もう少しでこの気味の悪さから解放されるのだと思うと、少し気が楽になったように思える。

ちなみに、今日は移動が多かったためか手紙は4通だった。
もちろん、すべて未開封でトキ兄が持って行った。





「水月、説明はわかったか?」



「うん、なんとか。 ごめんね、二人とも…、こんなことになっちゃって…」





ICレコーダーの使い方を何とか頭に叩き込んだ僕は、真斗の言葉に頷く。
ICレコーダーなんて使ったことがなかったから難しそうなイメージだったけど、案外楽だったのが救いだった。

でも、この用途を考えると気を落とさずにはいられなかった。
普段なら空元気でもなんでもして乗り切るのだろうが、僕は皆に甘えてしまっているのだろうか?





「子猫ちゃんは悪くないから謝る必要はないよ。 こんなゲスいことをするような輩を潰すのは男として当然だしね」



「うむ、神宮寺の言う通りだ。 謝る必要などない。ほら、先に風呂に入ってこい水月」



「うん。 ありがと! じゃ、お言葉に甘えてお風呂借りるねっ」





僕は2人の言葉を聞いて少し軽くなった足取りでお風呂場へと向かった。

熱いお湯で体を流してさっぱりした後、僕はレンと真斗に挟まれる形でベッドに横になり、就寝する形に。

初めはレンと寝るって勝手にレンが決めてて、そこに僕の身を(なんでかは分からないけど)按じた真斗が「神宮寺と寝るなど何をされるか分からん」とか言って、常に喧嘩腰ぽい2人は軽い言い合いになって…。

じゃあ、と僕が3人で寝ることを提案し、今の状態に落ち着いたのだ。
けれど…。

真斗は寝つきがいいのかすぐに寝て、僕も寝つきが悪い方じゃないから寝ようとしたところ、レンが抱きついてきた。





「レン?」





僕は真斗を起こさないように、比較的小さな声でレンの名前を呼ぶ。

すると、レンは「いつもはこんなに早く寝ることがないから寝れないんだ。 子猫ちゃんがおまじないをしてくれたら寝れるかも」と少し悪戯な笑みを浮かべて僕を見ていて、その近すぎる距離に僕は少し驚いた。

おまじないって…あのおまじないかな?

取りあえず、特に減るものでもないのでそれを引き受け、レンの額と左頬にちゅっと小さなリップ音を立てておまじない≠交わす。



「お休みなさい、レン。いい夢が見られますように」



これもトキ兄がやってくれていたことだ。
中々僕と同じ時間に寝ることの少ないトキ兄は、まだトキ兄と話すと駄々を捏ねる僕によくやってくれていた。

僕のおまじない≠ノレンは満足したのか、「俺からも」と僕の額にキスを落としてそのまま眠りへとつく。

もちろん僕に抱きついたまま。

―あったかい…。

なんだか冷たいイメージのあったレンの体は想像していたより幾分温かく、人肌に触れて安心しきった僕はレンの後を追うように夢の中へとおちていった。



翌朝、目を覚ますと、目の前には驚いた顔で口をパクパクさせている真斗が視界に入った。

「おはよぉ、真斗」とまだ眠気の残る体を起こせば、腰にまわっている長い手。
ああ、結局抱きついたまま寝てたんだ。

そんな思考を巡らせていると、真斗がレンを叩き起こした。
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