とりこ
□2話
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「白夜、重くない?大丈夫?」
さすがにタツノオロチの一部とはいえ、背中には乗り切らなかったので、大葉の木の葉にくるんで白夜がくわえている。(もちろん果物は背中に括り付けている。)
「ガル」
大丈夫だと言わんばかりに軽い足取りで私たちの横を歩く。
「西の海岸に付いたらそれ、食べようね」
「ガウゥ!」
私がそう語りけると、白夜は嬉しそうにしっぽを振って少し速足で私たちの斜め前をルンルンと歩き出す。
「大分懐かれてるし!スノータイガーって、警戒心高いから、懐かないどころか、なかなか姿現さないのに…」
たぶんミズキちゃんって動物に好かれやすい体質なんだし!とか言いつつホワイトアップルにカプリとかぶりつくリンちゃん。
ホワイトアップルは、白夜が持ってきてくれた果物の包みのなかから拝借したものだ。
「ミズキちゃんは、この世界についての常識は知ってるし?」
「うん、大体は把握してるよ。ただ、通貨とかわかんないからそこが心配かな…」
「それくらいならすぐ覚えられるから大丈夫だし!お金は全然心配しなくても、ハゲがなんとかしてくれるし!」
「あはは…」
ハゲって、マンサム所長のことだよね?
今ストーリーのどこらへんかわかんないから、下手に人物の名前は出せないな…。
今後人とどう接するか考えているうちに、私たちは森をぬけ、海岸へと出た。
「あ、お兄ちゃんだし!」
リンちゃんの手を振る先にいるのは色とりどりの髪を風になびかせているサニーさん。
「リン!…と誰だ?」
手を振るリンちゃんに気付いてこちらへ近寄ってくるサニーさんが首をかしげて私のほうを見る。
「えっと…」
「ミズキちゃんだし!トリップしてきて、今日から本部で一緒に暮らすんだし!」
「はぁ?」
いきなりのことで頭をかしげるサニーさん。
当然だ。
いきなりトリップがどうのと言われてもわかるわけがない。
仕方ないので、私はリンちゃんにしたように、サニーさんにも説明をした。
「…てことは、前、もともと別の世界のやつってことか?」
「はい…。厚かましいながら行く当てがないので、今は助けてくれたリンちゃんについていくしかなくて…」
「ま、いんじゃね?スノータイガーが懐いたってなら所長も興味もつだろうしな。っころで前、そのスノータイガー…研究所に持ってくのか?」
「あ…」
そうだ、白夜は絶滅危機種…。
もしかしたら実験台にされてしまうかもしれない。
そんなところに白夜を連れてはいけない…。
「…実験台にされるかも…とか考えてんだろ?前」
「!」
「それだったら大丈夫だし!ウチがハゲにきっつーーく言っとくし!それから、ちゃんと
ミズキちゃんの部屋に置けるように説得するし!」
「サニーさん、リンちゃん…ありがとう。でも、白夜乗せるにはヘリ小さいんじゃ…」
「そこら辺は、ヨハネスに連絡してIGOの大型ヘリ飛ばしてもらうしー!」
「そだな、大型のやつならこいつも乗るだろ」
ヨハネスさん大変だなぁ…。
ははは。
「あ、えっと、サニーさん」
「…っきから気になってたんだけど、前、レに‘さん’付けんのやめろ。慣れねーし。あと敬語も禁止な」
「…分かった、サニー。サニーはなんでこんなところにいるの?リンちゃんに聞いた限りだと、スノータイガーが主に生息するのは森の深部なんでしょう?」
ここへくる間にリンちゃんから聞いたスノータイガーのことを思い返して、サニーへ質問をする。
すると、サニーは何かを思い出したように、髪を操ってヘリの中からかごを取り出す。
「っかり忘れてたし」
「美肌キャビアだし!」
「美肌キャビア…たしかサニーのフルコース・オードブルの食材だよね?」
「よく知ってんな、ミズキ。たまたま海探索してたら捕獲できたんだし。ヨハネスのヘリが付き次第帰って調理すっぞ!」
「やったしー!」
喜んだリンちゃんが携帯を取り出し、ヨハネスさんに連絡をとる。途中脅しに近い言葉が聞こえたのは気のせいだ…うん…。
「てか、そのスノータイガー、っに咥えてんだ?」
「あ、忘れてた。白夜、お肉と果物おろして?」
「ガゥッ!」
ドスンと口から落とされた肉を見て、サニーは目を見開いた。