とりこ
□3話
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ガコンッ
「うぁ!?」
着陸と同時に強い衝撃が私を襲った。
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普段なら不意打ちでこんなことがあってもすぐ体制整えてコケることはないんだけど、体制を整える前に私はサニーの触角によって支えられた。
「う? あ、サニー、ありがと」
「別に、これくらい大したことないし」
私をちゃんと立てる姿勢まで戻すと、サニーは触角をしまった。
どうやらサニーのヘリも収納庫へ移動し終わったみたいで、私たち三人はすぐにヘリを下りて内部へと入った。
もちろん、白夜も一緒に。
内部は広いから、白夜が歩いてても特に問題はない。
サニーは室内に入ってすぐ美白キャビアを調理するため、厨房へと向かっていった。
「ミズキちゃん、さっきの、怪我とかしてないし?」
「うん、大丈夫。サニーが触角で支えてくれたから」
「お兄ちゃん、たまにはいいことするし!ところで、ハゲがうっさいから今からハゲのとこ向かうけど、体調とか大丈夫?」
「ん、全然平気だよ! 白夜は大丈夫?疲れてない?」
「ガゥ」
「大丈夫そうだね、よかった」
マンサム所長、白夜の血液採取に協力してくれって言ってたけど、白夜が嫌がることはしたくないなー…。
ってか、むしろ白夜のこの体に注射針さして血管に届くの?
筋肉とか邪魔で届きそうにないんだけど…。
ちらりと横を見ると頼もしいほどの筋肉が付いた手足が見えた。
さすが森の長だっただけあるよね。
綺麗な筋肉してる。
「着いたし」
リンちゃんが足を止めたところは大きな扉の前。
所長の部屋だろうか。
「ハゲ―、ミズキちゃん連れてきたし」
「え、今ハンサムって言った!?」
「言ってないし!」
「…こほん。ほぅ、君がスノータイガーを手名づけドラッグオレンジの猛毒をものともしなかった…」
ふむ、と私を一度上から下へ見て、机の引き出しから分厚いファイルを取り出し、なにやら睨めっこをしている。
「リン、お前は席をはずせ」
「えー!ウチもミズキちゃんといたいし!」
「…検査の話をする」
所長がそう口にすると、リンちゃんは渋々「終わったらちゃんと連絡よこすし!」といって部屋から出て行った。
「ミズキ、検査の内容はこうだ」
検査内容は血液検査から始まって、レントゲンや、DNA検査までするらしい。
そして一番問題であり、メインであるのが―…
「毒の抗体をどれだけ持っているか検査する。ドラッグオレンジが大丈夫なんだ、第2級に指定されてる毒は大丈夫だろうが…。なぁに、心配はいらん。反応が出る程度の量しか投与しんからな」
へぇ…。
さっきのオレンジの毒って第2級の猛毒なんだ。
ってか、毒投与されるのかー…。
乗り気じゃないな。いや、乗り気だったらおかしいんだけどね。
「それから、これが携帯な。俺とリンとサニーとお前さんの検査…主に毒の検査を担当する葛西の番号はすでに登録してある。なにかあったらかけろ」
「検査はこの後すぐ…ですか?」
「いや、明日からでも構わん。今日は休んで、明日万全な状態で検査に臨むといい。話は終わりだ、リンのやつがうるさいからな」
「はい、ありがとうございました」
パタン
扉を閉めてすぐにリンちゃんの番号に電話する。
「《はーい、誰だし?》」
電話の向こうから元気な声が聞こえる。
「私、ミズキだよ。連絡用に携帯もらったの。話終わったよ」
「《終わったなら食堂に来るといいし!ちょうどお兄ちゃんの料理が終わるころだし。食堂は、ハゲの部屋を背にして右にまっすぐいって、突き当りをさらに右だし》」
「わかった、今行くね」
ピッ
通話を切って、携帯をポケットにしまう。
えっと、右の突き当りを右…ね。
『あぁ、それから毒の検査のことはまだリン達にいうなよ』
帰り際に所長から言われた言葉を思い出す。
隠し事…か。
う〜ん…リンちゃん達に隠し事するのは嫌だけど、仕方ないよね…。
そんなことを考えていると、不意に体が浮いた。
「ふぇ!?」
ななな!
なにごと!?