とりこ
□5話
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朝7時を回った頃。
私はいつも寝ているベッドとは違う薄水色のベッドの中で目を覚ました。
グルリと室内を見渡してもいつもの自室ではなく、何度目をこすっても昨日サニーやリンちゃんと作り上げた部屋だ。
「やっぱり…夢じゃなかったんだ…」
いや、嬉しいけどね!
にしてもちょっと早く起きすぎたかな?
大分寝たつもりだったんだけど…。
検査は10時、今は7時。
3時間ほど余裕があるため、少し暇を持て余す。
「ま、いっか。…今日はラフな服装でいいよね。どうせ検査服に着替えるんだし…」
そう思い、昨日買ってもらった服の中から最もラフで動きやすい短パンとV字のロンTに着替え、くるぶし靴下にスニーカーを履き、顔を洗って身支度を整えた。
レントゲン撮るって言ってたから髪は結ばないほうがいいよね。
横になったりもするだろうし。
コンコン
「ミズキさん、いらっしゃいますか?」
…?
誰だろ…。
聞いたことない声だな。
「はい。開いてるのでどうぞ」
カチャッ
ドアが開いた先にいたのは若い男の人だった。
「あの、どなたですか?」
「僕は今回ミズキさんの身体検査及び毒の血清検査の総責任者の葛西です」
あ、葛西さんか。
へぇ〜、なんか…真面目そうな人だな…。
「今日の検査なんですけど、身体検査は早く終わるので、午後から毒を入れたいんですが…体調は大丈夫ですか?」
「はいぐっすり寝たので万全ですよ。それから…あの…」
「質問ならどうぞ。僕がお応えできる範囲なら答えますよ」
‘毒って何種類を何日間で入れるんですか?’
そう質問すると、葛西さんは持っていた分厚いファイルから一冊に纏められた冊子を取り出した。
「これがミズキさんに入れる毒の種類です。およそ600ほどあります。もちろん微量で反応が見れる程度しか混入しません。混入する期間は、体内で混じってしまうとまずいものは数週間おいてからに入れ違いで混入します。毒の種類によりますが、反応の出る時間を過ぎれば違う毒を入れてまた様子を見る…といったように、毒を入れます」
ほうほう…。
えーっと、数時間に一回は毒を摂取しろと。
で、種類は約600…。
ってことは、即効性が約3分の1を占めるとして、平均時間は3時間。
順調にいって一日6つ?くらい?
あれ、100日間も毎日毒入れられるの?
うわぁ…。ゾルディック家とあんまし変わんないんじゃない…?
「あ、即効性の毒から入れるので、今日のノルマは10〜15の毒の混入ですから」
…鬼がいるよ。ここに!
いや、毒効かないだろうからいいけどね!
ん?ってことは100日もかかんなくて済むのか。
なら今日のノルマ倍にしてもいいや←
「あの、今日の検査時間早めてもらうことってできませんか?」
うん、我ながら図々しいな。
でも暇なんだもん!
「え? まぁ、もう準備はできてるので構いませんが…。では今日はどれくらい毒入れますか?」
「本来のノルマの倍はいけますよ。むしろ4倍でもどんとこいです」
「4倍…ですか…」
ははっと苦笑いをされてしまった。
そんなに異常だろうか?
…異常だな。
早く済ませたいからといって自ら毒を入れてください…なんて頭がどうかしたとしか思えないもんね。
「身支度ができていれば今から向かいますか?検査室へ」と言われたので、行き道の時間でさっとさっきの冊子に目を通し、どんな毒があるのか見た。
改めてファイルを見ると、神経毒や幻覚作用のある毒から出血毒や、致死量0.2gの猛毒まで書き記されていたのが見え、IGOも本気だなぁ…と感じた。