うたぷり

□ワンコと水遊び!:一十木音也:
1ページ/2ページ




「あっつぅ…」


「水月―、アイス買いに行こうよ」






ある夏の日の昼下がり。
僕と音くん…いやこの寮にいるみんなが暑さに項垂れていた。

その理由は空調の故障。

いつもなら涼しいのに、猛暑日の今日に限って寮の空調が壊れたのだ。

…ホント勘弁してほしい。
おかげですごい暑い。暑すぎる。

外の温度は34度…、照りつけるような暑さの中外へ出る人は少ないだろう。
部屋にいれば少しは涼しいしね。

けれど、先ほどから僕の部屋に遊びに来ている、ペターっと机に突っ伏している音くんは暑さにやるせなくなったのか、アイスを買いに外へ出ようと言い出した。





「早乙女マートだったら、たぶん売り切れてると思うよ?


「…あー、確かに…」






おそらく音くんが行こうとしているのは早乙女マートだろうけど、今は1時。

朝からアイスを買い求める客が大勢おり、すでにアイスなど冷却商品は売り切れだろうということが安易に想像できた。

どうしようか?と僕に、音くんはスクッと立ち上がって「コンビニへ行こう!」という。

まあ、ここにいてもどうしようもないしいいか、と僕は音くんの案に賛成し、コンビニへ行き、目的のものを買って部屋で涼む…はずだったのだけど…。





「大丈夫!? 水月!」


「す、すみません!! 俺の不注意で…っ」





僕はコンビニの帰り、不運にも水撒きをしていたお兄さんのホースから誤って放出された水を、頭からかぶっていた。





「ただの水です、大丈夫ですよ。 気にしないでください」


「で、でも女の人に水をかけるなんて…! 本当にすみません!! せめてタオルを…」






…はぁ、やっぱ男には見えないのかなぁ…。
ちらりと音くんを見れば、心配そうにこっちを見て焦っていた。

なんていうか、ワンコみたいでかわいいけどしっかりした体つき。
こんなにしっかりした人と歩いてたら見えなくもないか…。

僕はそんなことを思いながら少し自嘲気味に笑い、焦っているお兄さんに「ほんと大丈夫ですから。 それより、また手元を狂わせないように気を付けてくださいね。 

ほら、行こう音くん。 保冷剤入っているって言ってもこアイス溶けちゃうし」と微笑みながら言い、音くんの手を引いて学園までの道を歩き始めた。










「あ、水月ちょっと待って」


「んー? なに…わぷっ」


「あははっ もうびしょびしょだから、どうせなら水遊びしない?」





音くんに呼び止められ、何かと思いきやいきなり顔にかかったのは水。

水遊びって…。音くんらしいなぁ、なんて思いながらも「いきなりしないでよ、もう…。 水遊びはいいけど、アイス溶けちゃうから先に食べてからね」と音くんのアイスを袋から取り出して渡す。

もちろん僕も買ってきたカップアイスを開けて、音くんの傍に座って食べた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ