うたぷり
□あの日聞こえた唄:四ノ宮砂月
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…〜♪ 、〜 〜―…
どこからか聞こえてきたその歌に俺は声を奪われて、ただその場に立ち尽くしてき聞いていた。
それが夜で、そいつがすぐにどこかへ行ってしまったから俺はそいつか誰かもわからず、あれからずっと探し、そして―…。
「おい、水月」
そいつを見つけた。
一ノ瀬水月。
こいつはよく那月といて、仲もいいやつだ。
俺は初対面から女だと思っていたが、どうやら本当に違うらしく、最近本当に男だと知った。
最近はたまに話したり、ほかの奴らに言われて曲を聴いたりもしていたが、歌は聞いたことはない。
歌は、前に那月が「みーちゃんのお歌は、とぉ〜っても素敵で、心がほわぁ〜ってなるような曲なんですよぉ」と言っていたのを聞いたくらいだ。
「砂月?」
俺の名前を呼びながら釣り会える水月。
水月は俺を見ると、一緒にいた一十木に別れをつげ、こっちへと歩いてきた。
「ちょっと話がある。 来い」
「え? うん…?」
こうやって話している時の声は、男とは思えないほどの高さ。
だからすぐには気付かなかったんだ。
あの時の声は…あの歌を歌っていたときはとても今とは似つかないような低さの、とても不安そうな声をしていたから。
俺は次の授業があるのも構わず、水月を噴水のある広場へと連れ出し、水の畔へ立った。
「砂月、次の授業が―…」
「…4日前の夜、ここで歌ってたろ。 お前」
今まで黙って俺についてきた水月が口を開くが、俺はそれにかぶせるようにしてここへ連れてきた本題を口にした。
水月は一瞬驚いたように目を開く。
その瞳には不安や焦り、悲しみといったようなものが渦巻いているように見えた。
だが、それを隠すようにして、すぐに困ったように笑いながら「聞こえてたんだ」なんて言
う。
チッ
思わず舌打ちが出る。
なんだってコイツはいつもそういった感情を隠すんだ。