うたぷり

□デモテープ:来栖翔
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「…ん?」




まだ肌寒い春。
俺は放課後、課題として出された詩のイメージをもっと明確にするため、夕日の光が注がれる廊下を歩いていた。


パートナーの水月も同じようなことを考えていたらしく、近日中にデモテープを録るらしい。
そのため、いつもは一緒に行動しているが今日は別行動で、一人校内をブラブラ。
けれど数十分しても浮かばない今回の課題の詩。


水月の曲を聴いで幾らか書き出したものの、何か足りない。
そんな時、俺の耳にわずかに届いた声…。





「水月?」





微かにしか聞こえないけど、それは聞き間違えるはずのない俺のパートナーの声だった。
ごく微量の声が聞こえる扉のプレートにはRR(レコーディングルーム)≠フ文字。





『よし、もう一回録ろう』





耳を扉にあてれば、さっきよりもはっきりと聞こえる声と、扉の開閉音。
どうやらデモテープを録音しているらしい。


中に入っていいものか…少し迷った挙句、結局気になって扉を開けると、ガラスで区切られた部屋の向こうに、水月がいた。
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