うたぷり

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部屋を出る際トキ兄は僕へ、小学生の子供へ言い聞かせるような注意を聞かせてくるが、毎朝こんな感じなので、手慣れた僕は

「ほーら! トキ兄そろそろ学校いかないとでしょ? 待ち合わせ場所で音くん待ってるんだから」

とトキ兄を急かし、学校へと行かせる。
まだ名残惜しいといわんばかりの表情をするトキ兄に、いってらっしゃいと告げ、僕は自分のディスクに置かれたパソコンを開いた。





「ふぅ…。さて、明日から忙しくなるしAKITさんの曲仕上げちゃおっと」





AKITさんとは、シャイニーの事務所に務めているアイドルの人で、少し前に曲を作ってくれとAKITさんの担当さんから依頼を受けた僕はその曲を作っていた。

僕は他の作曲が紙に何度も書いて曲を作っていくのとは少し違って、パソコンに譜面を打つ。
もちろんいつでもパソコンを持ち歩いてるわけじゃないから、紙に書いたりもするけど。





「ここのフレーズは…もう少し柔らかくした方がいいかな…」





もくもくと作業をこなしていくうちに、僕は時間を忘れてパソコンと睨めっこしていた。

気づけばもうお昼で、僕は台所へと向かって冷蔵庫の中を確かめる。

…が、昨日来たばかりで中に何が入っているわけもなく…。
―仕方ない、買いに行くか…。

僕は仕方なくなるべく目立たないようにTシャツに羽織りものをし、帽子を被り学園の外へ出ようと裏口へ足を運んだ。

学園内のマートへ行けば昼くらいはあるだろうが、流石に目立つと考えた結果の行動だ。

どうやら学園もすでに昼休みだったようで、外が少し騒がしい。




―しまったなぁ…。




なるべく人目につかないような道を進むが、池の畔を通らなくてはいけないため、まったく人に会わずに外へ出る…ということは不可能で、先ほどから何人かとすれ違っている。

すれ違う人々はなぜか僕を二度見したり、凝視したりしてきたが僕は何とか何の問題もなく畔の終わりの方へと来た。
すると後ろから聞こえてきた見知った声。





「水月ーー!!」



「え、音くん?」





声の主は音くんで、聞いたところトキ兄達と食堂にいたら僕が見えてこっちまで来たらしい。
食堂から見えたってことは…。
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