ヴァンパイア騎士
□白雪姫
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【むかしむかし、とっても美しいけれど、心のみにくいお妃様がいました。お妃は魔法の鏡を持っていて、いつも魔法の鏡に尋ねます】
ナレーションを務めるのは友香と藍堂で、どうやら主には友香がやるようだ。
ナレーションが始まると、スポットライトに当てられたのは妃役の梓葉で、ノリノリな演技をしだす。
「鏡よ鏡よ、この世で一番美しいのはだぁれ?」
「それはー…【それは枢様です!!!】…藍堂さん…」
妃の言葉に鏡役である支葵が台詞を続けようとしたところに、藍堂がナレーション室から割って入った。
台詞中に割って入られ、さらにその台詞までもが藍堂らしいというかあほなもので、ついため息をつく支葵。
割って入ってきた藍堂は、さらに玖蘭のいいところを並べ始めたところで、スピーカーからはゴンッと鈍いような音が走る。
【いってぇ!!?何すんだよ、友香!!
「何勝手に話してんだアイドル!お前、千里の台詞とった上に枢ってなんだよ、枢って。普通に白雪姫でいいだろ!ってか人の台詞とんな!」
だからってマイクで叩くことないだろ!?
「お前が暴走するからだ。ほら、マイク切れ。千里が台詞言えないだろ」
…チッ… 】
一通り口論した後に藍堂が舌打ちをしつつもマイクを切ると、支葵がやっとか…といった具合にのろのろと台詞を言い始めた。
「えーっと、…それはあなたの娘、白雪姫です…」
「なんですって!?」
梓葉は、オーバーリアクション(小指と人差し指、親指を立てている)をとる。
そしてツッコム間もなく暗幕が降り、再びナレーションが始まった。
【鏡がいつものように「お妃様です」と言うのを待っていたお妃は、白雪姫と聞いて怒りました。そして白雪姫を猟師に殺させるために、お妃は国一番に腕のいい猟師を呼んで白雪姫を殺すようにと命令を下します】
ナレーションが話している間に舞台は準備が整い、暗幕が上がり、ライトがつく。
ライトに照らされて出てきたのは、白雪姫役である玖蘭と、猟師役である瑞樹だ。
「やっとか…。全く、藍堂のせいで僕と瑞樹が二人っきりで出る場面まで少し時間がかかってしまったね…。藍堂には後でお仕置きかな」
「あんまりいじめないでね、かわいそうだから。…って、劇して劇!」
「僕はあまり乗り気じゃないんだけど…。まぁ瑞樹がそう言うなら形だけでもするか。…えっと?どこまでいくんだい?」
若干棒読みの上に、女言葉の台詞をアレンジしているが、どうやら劇にノリノリの瑞樹の為に演技はするようだ。
「…白雪姫、僕はある人に頼まれて君を殺さなくてはならないんだ…」
ノリノリにシリアスな雰囲気を作った瑞樹は、腰に提げていた短剣を抜くと玖蘭へとまっすぐ向ける。
そして次は白雪姫が驚く…はずなのだが…。
「いいよ、瑞樹…。君に殺されるなら僕は本望だ」
玖蘭がそう簡単に劇に乗るわけはなく、私情へと走る。
【こら枢!!そこで驚かないと物語が続かないだろうが!!「枢様!!今そちらへ護衛へ向かいま…ゴッ」すまん、藍堂は抑えとくから演技してくれ枢…。じゃないと瑞樹が悲しむぞ。この劇楽しみにしてたんだからな】
すかさずそんな枢にツッコミを入れる友香と、それを遮って枢に短剣を向ける瑞樹から枢を守ると言い出す藍堂。
冷静な友香は、そんな藍堂にもう一度マイクで体裁を加え、枢にはくぎを刺す。
「…仕方ないな…。どうしてそんなことを?」
瑞樹が悲しむと聞いて、それを無視するはずのない枢は、棒読みではあるが再び劇へと参加した。